今日は、給与の天引きと手取り額についてご説明したいと思います。
会社勤めの方であれば、給与明細を見て天引きされる金額の大きさに驚いた経験があると思います。転職においても、手取り額がいくらになるのだろうという心配をお持ちの方は非常に多くいらっしゃいます。
給与明細には、多くの場合、控除額(いわゆる天引き)とその費目が記載されていますが、ご自身でその内容を把握しているでしょうか。転職の場合、求人票に記載されている総支給額から自分の手取り額を予測できないと、予想外に実際の給与が少なくなり会社とトラブルになったり、再度の離職に結びつくかもしれません。
そのようなことが無いように、こちらで簡単に解説致します。
1. 総支給額
天引きされる前の額面上の賃金額を『総支給額』と言います。転職の際の給与の提示も総支給額で行われることがほとんどです。求職者の現在年収も、こちらを元に計算します。
2. 控除額
控除、つまり天引きされる金額はたくさんの費目がありますが、金額が大きいことになる順序で記載していきます。
※分かりやすくするため一般化して説明しますので、扶養状況や職業、年齢によっては異なります。詳細はインターネットでも入手可能な参照を示しますので、ご自身でお調べ下さい。
厚生年金
厚生年金の保険料率は、一律8.56%です。
例として、月給20万円と30万円の方を例にして金額を計算します。
月給20万円 月々17120円
月給30万円 月々25680円
なお、企業は天引きした上記金額と同額を負担し、二つ合算した金額を併せて保険料として納めています。
※参照 厚生年金保険料額表
健康保険
労働者の保険料率は一律5.04%です。
月給20万円 月々10080円
月給30万円 月々15120円
企業が同額を負担する点については厚生年金と同様です。
※参照 健康保険料額表
所得税
所得税率は、給与額に応じて税率が変動し、約0.15%~約40%の範囲で発生します。税率に大きな幅があるのは、給与が少ない人にはより税額が低く、高所得者にはより税額を高くする設計(累進課税)のためです。
月給20万円だと上記保険料を差し引いた172800円を元に計算 月々3770円(約1.9%)
月給30万円だと上記保険料を差し引いた259200円を基に計算 月々6850円(約2.3%)
※参照 源泉徴収税額表
雇用保険
給与から0.5%を一律で天引き。企業は厚生年金や健康保険と異なり、0.85%を負担し、合算金額を納付します。
月給20万円 月々1000円
月給30万円 月々1500円
※参照 雇用保険料率表
労災保険
職業により異なりますが、多くの職業は一律0.3%の負担があり、こちらは全額企業負担となっていますので、給与からの天引きはありません。
月給20万円 0円
月給30万円 0円
住民税
こちらは昨年度の年収を基礎として計算をします。計算式は複雑ですが、市町村役場に行くと計算してくれるそうです。年間で15万~50万円でしょう。
その他
これらが基本的な項目ですが、それ以外にも会社ごとに退職金や、積立金ということで天引きが行われていることもあり、会社に説明してもらったりご自身で調べてみても面白いと思います。
3. 手取り額
以上の控除額を計算すると以下のようになります。
月給20万円 毎月31970円(約16.0%)が天引き→手取り額 168030円
月給30万円 毎月49150円(約16.4%)が天引き→手取り額 250850円
このように手取り額は給与から約16%を減らしたものと考えれば大まかな計算ができます。また、住民税は計算に入れていませんが、それを含めると約20%を差し引いた額が可処分所得になると考えればよいでしょう。
結論
総支給額から20%を引いたものが手取りの目安となります。
※繰返しになりますが、年齢、職業、扶養状況などで多少変わってきますので、詳細は参照をご確認ください。
4. ぼやきと激励
これまで見てもらえばお分かり頂けたように、厚生年金と健康保険が非常に大きな負担となっています(2つあわせると給与の13.6%)。特に年金は、自分の老後にかえってくるかどうかわからない現状のもとでは、どうしてもばかばかしく感じてしまいます。
しかし、2つとも自分や家族のためにとても大切な保険です。年金の納付は老後だけではなく、万一障害を負って働けなくなってしまったときの障害基礎年金の支給要件ともなります。また、企業はその2つの保険については同額を負担してくれているので、ぼやきながらも納めていきましょう!
転職において、給与は重要な要素です。給与だけで決めるべきではありませんが、家族や家のローンなどを考えしっかりと予測し、計画を持って転職するようにしてくださいね。