私は社内で労働問題や行政手続きなどを担当しておりますので、その際に経験したことや学んだ事をお伝えします。
少し堅苦しくなると思いますので、タイトルを見て興味を持って頂ければご覧になってもらえればと思います。
今回のテーマは『退職を会社から拒否されたらどうすればよいか』です。
この仕事をしていると退職についての相談をよく受けます。就業中の転職活動は、退職と入社の両方が必要ですから当たり前ですよね。
その中には、会社を辞めたくても辞めさせてもらえない、と悩まれている方もいました。
ブラック企業のやり口として、最近メディアでも話題になっています。
このように会社が従業員の意思に反して、無理やり引き止めることは出来るのでしょうか。
ただ、当該従業員が多くの顧客を持っていて引き継ぎに時間がかかる場合や、優秀な社員だから慰留するといった場合もありますので、引き止め=ブラック企業ではございません。
退職拒否の具体例
私がお聞きした中でひどかったケースは、退職届を受け取らない経営者です。
退職の際には辞表として退職届もしくは退職願を会社に提出します。しかし、それを察知して、顔を合せないようしたり、話し合う時間を持たないように無視し続ける経営者がいました。また、退職の意思を聞いても単純に受け入れないケースもありました。
従業員としては、勝手に辞めて行かなくなってしまう、という手段もありますが、退職後は『離職票』を会社から出してもらう必要がありますので、その手続きをしてもらうためにもしっかりと納得してもらう必要があります。また、ひどい経営者だったとしても、せめて最後は話し合って納得して辞めたいですねよ。そういう従業員の気持ちを逆手に取り、退職を認めない経営者に対してはどのような対応が出来るでしょうか。
辞表の受取りを拒否された場合は
受取り拒否に対しては、退職届を内容証明郵便で送付するという手があります。郵便局に行けば文字数に応じて1000円ほどあれば手続きをしてもらえます。
また、法的には、相手が直接受け取らなくても、相手方が受け取ることができる状況になれば到達したと考えることができます。
例えば、辞表をデスクに置く、秘書に手渡しをする、でも可能です。ただ、そんなものなかった言われてしまう可能性もあるので、メールでも退職届を提出した旨を併せて送信し、証拠を残しておくとよいでしょう。
退職する権利
退職の意思を伝えてしまえば、2週間で効力が生じます。これは法律で定められた権利ですので、就業規則に何と書かれていようと、経営者が何を言おうとも関係ありません。
民法627条1項にはこう定められています。
「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」
平たくいうと、正社員はいつでも辞めると言える、そして言った後は、2週間がたったら社員でなくなる、ということです。
就業規則に、1ケ月の期間を定めている企業も多いですが、民法が定めた2週間でやめることができるという労働者の権利を制約するものですので、拘束力はありません。ただ、就業規則に従う方がスムーズにはいくでしょう。
実行する際の注意点
実際にこのような強引な手段を取るケースでは、労働局や労働基準監督署、法テラスなどで事前の相談を受け万全の準備をしてください。
当社としては、お互いに誠意をもって話し合い、退職することをお勧めします。
ただ、誠意が通じない場合もありますので、そんな時は強行突破も可能だということを認識して、強気で持って交渉して下さいね。