今日は「手当て」についてお話をしたいと思います。
同じ総支給額でも、全て基本給の企業もあれば、様々な手当てがついている企業もございます。なぜ、そのような設計になっているのでしょうか。また、手当は企業、従業員にどのようなメリットがあるのでしょうか。
手当の例
良くある手当は以下のようなものです。
通勤手当
残業手当
家族手当
住宅手当
職能手当(営業手当)
役職手当
皆勤手当
転勤手当
■要注意!
転職の際に注意して頂きたいのは、例えば「月給25万円」と提示されたときに、それが基本給を指すのか、手当込みの総額なのかをはっきり尋ねるようにしてください。
基本給だと勘違いしたまま入社して、最初の給料日に思っていたよりかなり少ない給与明細を見てがっかりされたケースもあります。その後、トラブルに発展するケースも実際にあるそうです。
私の経験上、企業様は、手当を上乗せした金額を給与としてご提示されることが多いと感じますが、求職者はそれを基本給だと早合点してしまいがちです。
給与額の交渉は選考段階では難しいかもしれませんが、「ご提示いただいている給与額は、手当込の金額と考えてよろしいでしょうか。」と聞けば嫌がられることもないと思います。
どちらが有利?
では、総支給額が同じである場合、手当の割合は多いものと少ないものでは、どちらが有利でしょうか。
ケースバイケースなのですが、結論を出せと言われれば、基本給が多い方が有利だと考えます。
考えるポイントは、①保障の厚さ②生涯賃金③手取り給与額で差が出てきます。
- 身分保障
基本給は、労働法の大原則である不利益変更禁止原則がございますので、従業員の同意なく一方的には減額できません。それに対して、手当は廃止や減額が比較的容易にできるようです。
身分保障という点では、基本給の割合が多い方が有利と言えそうです。 - 生涯賃金
例えば、賞与が基本給2か月分といった場合は、基本給が多い方が賞与額も大きくなります。また残業代も、基本給を基準に算定しますので、基本給の割合が高い方が残業代も高くなります。退職金も同様です。
生涯賃金は、基本給の割合が高い方が多くなります。 - 手取り額
一方、手取り額は基本給の割合が少ない方が、手取り額が増え有利です。
理由は、通勤手当は所得税の課税対象ではないから、所得税が少なくなる結果、手取り額が増えるのです。ここで注意が必要なのは、非課税となるのは実費弁償(立替払い)の性質を持つ通勤手当のみで、金額も月に10万円までに限られます。その他の手当ては、報酬とされ課税対象となります。
では、手取り額がどのくらい増えるかかというと、例えば、30万円の基本給ですと、8420円が所得税として天引きされます。基本給25万円、通勤手当5万円だと、6530円が所得税として天引きされます。手取り額は、後者の例が約1890円多くなります。
※もう一歩前へ
なお、通勤手当は社会保険(健康保険、厚生年金保険)の保険料には影響しません。
社会保険制度上は、通勤手当も労働の対価たる報酬として算定の基礎になります。つまり、通勤手当の多寡は保険料の控除額、裏返せば給与の手取り額に影響しません。
通勤手当が社会保険と税制上で異なる法的評価を受けるのは合理性に欠ける、とのもっともな批判があるようですが、現時点では、ダブルスタンダードとなっています。
企業のメリット
企業にとっては、基本給の割合が少ない方が、①従業員の身分保障を薄くして企業に有利に改変できる範囲が広い、②賞与、残業代、退職金も少なく抑えることができる点で有利です。
ただ、これは少しうがった見方で、純粋に従業員のためを思って基本給に手当を上乗せしている企業の方が多いことは誤解の無いようにしてくださいね。
まとめ
このように考えると、身分保障が少しでも厚く、また生涯賃金が高くなることが多い、基本給の多い設計がよいと考えられます。
とはいえ、扶養手当があれば、お子様が生まれたら給与がポンと上がりますし、様々な手当てが充実している企業は安心感もあります。
一概にどちらが良いのかはやはり、ケースバイケースです。
必ずしてほしいこと
一番大切なことは、入社を決める前に求職者は説明を求め、企業はしっかりと説明することだと思います。予め聞いていれば入社後に後悔したり、トラブルが起きるのを防ぐことができますので、謙虚な姿勢で、でもしっかりと聞いてくださいね。