今回は離職後についてお話します。
離職するとこれまでの毎月の給料がなくなりますので、無収入の期間どのように生活をするか誰もが不安に思います。そこでその無収入の期間でも安心して就職活動をするための制度、雇用保険についてご説明します。
それともう1つ、再就職を決めた場合に支給される『再就職手当』についても説明します。
1. 雇用保険の大きな考え方
雇用保険は、正式には『基本手当』といいます。ここではわかりやすく雇用保険と表記します。
まず雇用保険の趣旨、つまり法律の根元にある考え方ですが、失業した方の生活を守り、安心して求職活動を行えるようにすることで、再就職活動を支援する、というものです。簡単に言えば、先立つもので『再就職を応援』することを目的にしています。
雇用保険を受けることに抵抗がある方が中にはいますが、再就職を目指す方は堂々と受け取ってくださいね。
また、雇用保険の性質は、「保険」と名前がついている通り、これまで自分が支払ってきた保険料の対価として支払われる性格を持っていて、国から無償で援助されるものではございません。
これまでしっかりと働き、その給与から掛け金を天引きという形で納付してきているからこそ、給付される保険金です。そういった意味でも、必要な場合は受給手続きをしてくださいね。
2. 雇用保険の給付が受けられる人とは
ではどういった方が、雇用保険を受け取ることができるのかですが、『過去2年間で12カ月以上にわたって雇用保険を収めている労働者』が原則です。通常の社会人の方ですと、ほとんどの人があてはまります。
納付状況については、給与から天引きという形で雇用保険を納めていますので、ご自身で把握していない方も多いようです。
確認したい場合は会社に照会するか、給与明細を確認してください。会社の協力が得られない場合や信用できない場合は、ハローワークで「雇用保険被保険者証」を発行してもらえば、支払い状況を確認できます。
誰もが気になる『いくら』『いつから』『いつまで』給付されるのかについては、次回ご紹介したいと思います。
3. 再就職手当
『再就職手当』というのは、雇用保険を受けている人が再就職をすると、もらえるはずだった残りの金額の5~6割をまとめて支給される制度です。
これは雇用保険の本末転倒を是正する目的で創設されました。
つまり、雇用保険の受給期間は意図的に再就職をしない方が増えており、『働かない方が得』かのような構造になってしまっています。
雇用保険は、『再就職を応援する』ことを目的にした手当てであるはずが、実態では逆方向へ作用してしまっているのです。そこで、頑張って再就職を決めた人には、お金を支給することになりました。
お金で再就職を動機付けることには賛否あると思いますが、私は頑張って就職を決めた人が損をしない、逆に言えば『努力が報われる』という意味で良い制度だと思います。
受給のためには、ハローワークを通じて紹介された企業への再就職である必要があります。
民間の紹介会社からの再就職の場合は、「再就職給付金取扱職業紹介事業者」の認定を労働局から得た事業者である必要があります。徳島では認定を受けていない紹介会社が多いと聞いていますが、当社は求職者様のためにもこの認定を得ており、給付実績もございます。
再就職手当を得たい場合は、紹介事業者が「再就職給付金取扱職業紹介事業者」の認定を受けているかも確認してくださいね。
では、より具体的に『いくら』『いつから』『いつまで』受給できるのかをご説明します。
4. 金額は『いくら』もらえるのでしょうか。
失業中の受給額は、退職前の6か月の給与を基準にします。
※給与には、賞与は除き、残業代や手当ては含める。
この基準となる金額に、50%~80%を掛けた金額が支給されます。
一般的な給与水準の方であれば、6割と考えてください。
雇用保険の支給額→→→もらっていた給与の6割
5. 雇用保険は『いつから』もらえるのでしょうか。
これは退職の理由によって区別されています。
■会社都合退職→→→退職後すぐに支給
求職者にとって1番有利なことが多いのが『会社都合退職』。
ハローワーク登録後、7日間の待機期間経過後の最初の支給日から受給できます。
会社都合で退職となるのは、退職勧奨に応じた場合や人員削減のための早期退職に応じた場合などです。
本当は自分の希望で退職するけれど、失業保険を早く受け取りたいから会社都合にしてもらいたい、という場合は企業の理解が必要です。企業側からすると、一定期間会社が雇用関係の助成金が受けることができなくなるデメリットがあります。
■自己都合退職→→→退職後、3ヶ月経ってから支給
自己都合退職とは、労働者からの申し出による退職で、転居やキャリアアップのための転職に伴う退職などです。
これは、退職から約3カ月の給付制限期間の経過を待ってから失業給付が支給されます。
■解雇→→→退職後、3ヶ月経ってから支給
ここで、『解雇』と『退職』について整理しましょう。この二つを合わせた会社を辞めることを総称して『離職』と言います。
退職とは、会社と従業員の合意(意思の合致)、つまり双方が納得して辞めるケースです。
他方で、解雇とは、会社が強制的に辞めさせる、いわゆるクビです。従業員が辞めたいと思っていない点が大きな違いです。会社都合退職と解雇はよく勘違いしがちですので、気を付けてくださいね。
懲戒解雇の事由(クビになる理由)には、労働者に職務規律違反などの著しい問題行動や、横領などの犯罪行為、長期の無断欠勤など通常社会人として許されない行為があてはまります。
懲戒解雇された場合、ハローワークに登録する際に懲戒解雇と記載しなければならず、企業への紹介状にもそれを記載されてしまいます。ハローワークを介さない場合でも、履歴書に懲戒解雇と書かないで転職に成功しても、あとで発覚すると経歴詐称としてまた懲戒事由になってしまします。
■契約期間満了→→→退職後すぐに支給
契約社員や派遣社員として働いていた方が、契約期間を満了して離職する場合は、3ヶ月の給付制限期間の経過を待たずに支給されます。
6. 雇用保険は『いつまで』受給できるのでしょうか。
支給期間→→→3ヵ月間以上
年齢、勤続年数、離職理由によっては、3ヶ月より長くなり、最大で330日になります。
例えば、勤続年数が10年以上で自己都合退職だと120日です。
これが、会社都合退職になると210日(32歳の場合)となります。
7. 再就職手当(就職奨励金)はいくらもらえるのでしょうか。
再就職手当は、雇用保険受給中の人が就職を決めた際にもらえるお祝い金のようなものです。
早期の就業を後押しするために、設けられた制度です。
再就職手当の金額→→→残りの雇用保険の支給額×5割~6割
こちらは、条件がいくつかあります。
想定されている典型は、退職後ハローワークに登録し、雇用保険を受給しながら転職活動をしていた。その後、雇用保険の受給期間を2ヶ月残してハローワークの紹介、または有料職業紹介事業者(再就職手当取扱事業者の届け出あり)からの紹介で企業から内定を得た、というような場合です。
必要な場合は雇用保険を利用して、良い転職活動を行ってくださいね。
いずれの手当も窓口はハローワークになりますので、ご検討されている方はそちらにお問い合わせください。
転職を検討されている場合は当社へのご登録を頂ければ、雇用保険も含めてご相談にのらせていただきます。
8. 最後に
転職には思い切りも大切ですが、事前に出来る対策に関してはしっかりと準備しておくことも大切です。
離職を考えている人は、転職先が見つかるまでの間の生活や入社後の生活もシュミレーションしてみてください。雇用保険、再就職手当を活用することで、余裕を持った良い転職活動が出来るかもしれません。