コロナ禍において、超売り手市場だった採用市場が、大きく買い手市場に転じています。
企業にとっては採用のチャンスと言える状況と思われるかもしれませんが、欲しい人材が簡単に採用できるかというとそうではありません。
逆に、買い手市場だからと言って、全ての人の転職が難しくなったかというとそうではありません。
企業は、採用チャンスが広がる職種と、採用難易度が高まる職種を理解することで、今後の採用戦略立案のご参考に頂きたいと思います。
人材にとっては、どのような企業に転職のチャンスがあるのかを考えるきっかけとして頂ければと思います。
コロナ禍でニーズが高まる職種、ニーズが下がった職種
■ニーズが伸びた職種
ご想像通りの結果となるかと思いますが、いわゆるIT関連の職種については、コロナ以前よりも更にニーズが高まっています。また、広告やコンサルタントなども需要が高まってきています。詳細の解説を進めます。
- デジタルマーケティング・広告関連(特にインターネット関連)
コロナ禍においては、対面型営業やイベント開催が難しくなる中、オンラインでのイベント開催やインターネット広告を活用した集客がより拡大しています。そのため、広告関連やIT関連でのマーケティングの能力がある人材のニーズが高まっています。
2019年に初めてTV広告をインターネット広告費が上回り、2兆1000億円の市場になるなど、急成長を続ける広告、マーケティング分野ですが、コロナ禍においてもニーズの高まりに拍車をかけています。 - IT技術者、研究開発
コロナ禍で三密を避けるため、IT化、機械化が加速しています。一般的なシステム開発はもちろん、IOT、AI、ロボット開発など更に需要がのびています。
特に、データサイエンスやAI領域などに関して高い専門性の持つ人材であれば、新卒社員でも年収1000万円をこえる初任給の提示があるなど、空前の人材獲得合戦が起きています。 - コンサルタント、マーケティング、プロジェクト管理
先行きが見えにくい中、市場を正確に分析し、戦略を立案ができるコンサル志向・コンサル人材が更に求められるようになっています。また、プロジェクトを確実に推進するための人材も求められています。
■従来通りニーズが高い職種
専門性が高く、資格が必要な職種で、人材の不足感が強かった職種はコロナ禍においても、ニーズが高いようです。特に、建築・建設・土木は慢性的な人手不足のため、コロナ禍においても、採用がしやすい職種とはならないようです。
- 公認会計士・税理士
難関資格取得者かつ元々の人材が少ない職種です。
また、コロナ禍において経営数字の重要性や増す中、ニーズが高まっているようです。 - 建築・土木・施工管理
従来よりも常に人手不足が言われていた業界・職種です。建物や設備のメンテナンス需要やオリンピック・パラリンピック関連の建築・建設需要が伸びていましたが、コロナ禍において、EC化の加速で物流網の強化が求められる中、物流施設建設の大規模プロジェクトなども都心では立ち上がるなど、ニーズは堅調です。
■ニーズが下がった職種
どの企業にもある職種で、専門性があまり高くない職種は人材ニーズが下がってきているようです。
コロナ禍において、既存社員と同様の能力や経験のある人材の採用は手控えていることがうかがえます。
- 営業・サービス
オンラインでの営業が可能な業種では、営業職ニーズには変わりがないようですが、対面での営業が必要な業界においては、採用活動を見合わせる企業が増えているようです。 - 管理(経理、財務、総務)、人事
人事や経理は、会社が拡大するときや企業のフェーズが代わるときに、管理部門を増やす傾向があります。
拡大するよりも守りの経営を目指す企業が増えたため、管理や人事の人材募集が減ったのではないかと考えられます。
コロナ禍で転職活動者は増えているのか?
コロナ禍において、転職活動をする人材が増えたのですか?という質問をいただくことがありますが、データを見る限り、転職活動をする人材は減少していると言ってよいでしょう。
2019年5月段階における新規転職者数は、41万人。
2020年5月は35万人となり、昨年と比較すると約85%となっています。
コロナによる失業者は増えていますが、派遣やパート・アルバイトなどが中心です。
超売り手市場だった時のように、より良い職場や待遇を求めた前向きな転職活動を行う人材が圧倒的に減っているのではないかと思います。
その中で、コロナ以降でも転職活動をする人が増えた職種が営業職です。
転職エージェント31名に、最も転職者が増えたと感じる人材の職種を聞くと、14名と回答しています。
(ダイヤモンド編集部調査。大手人材紹介会社のトップエージェント31人で調査)
地方企業に採用チャンスが広がる職種とは?
地方企業は、「営業・サービス」「管理(経理、財務、総務)、人事」などの職種の採用チャンスが広がることが考えられます。
なぜかというと、コロナ禍において人口が密集する地域の企業は対面型の仕事やオフィス出社が必要な人材は積極的には採用しなくなることが考えられるからです。逆に、地方企業では、対面型の仕事やオフィス出社に大きく影響がないため「営業・サービス」「管理(経理、財務、総務)、人事」の採用ニーズはあまり衰えないことが予測されます。
そのため、都心などで対面業務やオフィスワークがしにくくなった人材は、地方企業に目を向ければ、即戦力として活躍できる場があるでしょう。
地方企業においては、「営業・サービス」「管理(経理、財務、総務)、人事」の採用チャンスが到来しているのではないかと思います。