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【2023年度】企業を取り巻く環境の変化、労働市場の変化、働く人の意識の変化

2023.10.30

厚生労働省の「新しい時代の働き方に関する研究会 報告書(案)」という非常に興味深い資料があったので、記事として編集し、紹介させていただきます。

研究概要としては、企業を取り巻く環境や労働市場の変化が激しく、また働く人の働く意識や働き方への希望はこれまで以上に個別・多様化の傾向がある。そのため、働く人が希望する働き方を実現し、能力を十分に開発し発揮できる働く環境を構築しなければならない、という考え方を出発点として、これからの労働基準法制の在り方を研究するというものです。

まだ研究段階にはなりますが、今後の労働基準法整備の指針になる可能性も高く、今後の人事戦略にも取り入れるべき考えかと思います。また、補足の資料では、企業を取り巻く環境の変化、労働市場の変化、働く人の意識の変化などのデータが複数あり、雇用を取り巻く現状について非常に納得感の深まるものでした。

特に、企業経営者や人事の方には、現状をよりリアルに把握すること、そして今後の自社の労務管理や環境・制度作りにお役立ていただけるのではないかと思います。

また、全ての働く人にとっては、今後大きく社会が変化する中で、働く人にとっての環境整備が目指されるようになる中で、ポジティブな変化が生まれる期待感のある内容になっているかと思います。一方で、キャリアを受け身ではなく、自分自身でキャリア形成を目指すこと、より自分自身での健康管理・能力開発なども求められるものとなっています。

それでは、早速具体的な内容をご紹介したいと思います。

※厚生労働省、新しい時代の働き方に関する研究会 第15回資料参照

企業を取り巻く環境の変化

グローバル経済、デジタル技術が急速に進化する中で、各国の競争がますます激しく、国際政治も不安定で、コロナウイルスの影響が残る中で、世界中で物価や金融市場が不安定になっています。

国際競争が激しくなっている中、日本の一人当たりの名目GDPは日本が2004年12位、2005年15位、2006年18位に低下。そして、日本の一人当たりの名目GDPは、令和3(2021)年には3万9,803ドルとなっています。(OECD加盟国の中で第20位)。

また、次世代のインターネットや生成AI(人工知能)の進化によって、新しいビジネスモデルが生まれ、企業の環境が大きく変わるでしょう。デジタル技術の進歩は企業に多くの利点をもたらす一方で、市場や競争状況を急激に、連続的に変化をもたらします。その結果、デジタルを導入する企業にとっても不確実性をもたらす可能性があります。

AI等を活用している企業や、新技術に対応した組織改編等を行っている企業において、柔軟な働き方を積極的に導入している傾向があります。そうではない企業は従来の働き方から大きく変われていないことがうかがえます。

デジタルを活用でき、働き方を変えることができる企業ほど、人材獲得にもチャンスが生まれやすくなりますが、デジタル活用ができない企業は人材獲得においても不利な状態となっていくのではないかと思います。

労働市場の変化

人口減少等に伴う労働市場の構造変化の中で深刻な人手不足が起こっています。
日本は少子高齢化が急速に進み、人口減少局面にあり、今後は 15~64 歳の現役世代の減少が更に進む見込みとなっています。

日本の総人口は、2019年10月1日、1億2,617万人となり、65歳以上人口は、3,589万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)も28.4%となっています。
団塊の世代が全て75歳となる2025年には、65歳以上が全人口の30%となり、2040年には、人口は1億1,092万人に減少し、65歳以上は全人口の35%となっています。

以下のグラフは特に理解しやすいものとなっています。

65歳以上人口は、2000年から2025年にかけて急増しています。現在は、65歳以上の人口が急増しているということです。そして、2025年から2040 年にかけては増加が緩やかになっていきます。一方、20歳~64歳人口は2025年から2040年にかけて減少が更に進みます。

人手不足の状況は新型コロナウイルス感染症の影響下で一時的に緩和されたものの、その後は産業間で差が見られつつも再び深刻化し、その傾向は2022年に入り人手不足はさらに強まる状況になっています。

こうした状況は、豊富な労働力供給を前提とした雇用管理・労務管理に転換を迫るものであるとされています。

日本は、国際的に見ても「就業率」や「失業率」などの指標が高い一方、労働時間や仕事の内容等に関する決定権等で計られる「仕事上の重荷」という指標や「労働生産性成長率」はOECD(ヨーロッパ諸国を中心に日・米を含め38ヶ国の先進国)の平均を下回っています。

また、日本企業のエンゲージメント(仕事に対してのポジティブで充実した心理状態のこと)は、世界全体で見ても低いようです。

今までの日本では、豊富な労働力供給があったからこそ、労働生産性が軽視されていたり、従業員のエンゲージメントに対する関心の薄さにつながったのではないかと思います。

また、市場においても「おもてなし」「お客様は神様である」という日本人的なマインドは、安く、豊富な人材によって実現し、過剰サービスを生み出し、またそれこそが労働者にとって大きな負担になっていたのではないかと思います。競争が激しい日本市場の中で生き残りをかけた経営戦略だったとも言えますが、人口減少社会においては、豊富な労働力供給を前提とした今までの勝ちパターンでの経営戦略は理にかないにくいと言わざるを得ないと思います。

また、外国人労働に頼ることも難しくなってきています。円安で日本で働くメリットが低くなっている現状に加えて、ワークライフバランスが取りにくく、残業代未払いなどの問題が起きる日本企業の雇用環境の悪さもさらに、日本離れを生んでいるようです。

労働力がますます減少する中で、今まで以上に従業員を大切にし、エンゲージメントを高め、そして生産性を高めることを考える必要があります。また、労働力に限界がある中では、やることを増やす以上に、心的負担や身体的負担がかかり生産性がさほど上がらない業務や規則や習慣を廃止することが重要なのではないかと思います。

日本国内株への投資に際し考慮する企業の人材育成関連の情報においても、「労働関係の法令違反の有無」「人材育成・教育訓練の取り組み」を考慮するとあります。

それに加えて、機関投資家が開示してほしい人事施策として、「メンタルヘルスによる求職者数」「労働時間や労働場所の柔軟化」「従業員の健康維持・増進」「従業員のキャッリア形成」などの開示希望の割合が高くなっています。

企業の健全な経営や、正常で健全な労働環境が、今後の企業の成長にとって必要であるということを示していると感じます。

働く人の意識の変化、希望の個別・多様化

定年が伸び、また人生も伸びてくる中、職業人生が長期化しています。その中で、仕事に対する価値観や、生活スタイルが個別・多様化するようになってきました。また、仕事に対する価値観や生活スタイルに応じて働く「場所」、「時間」、「就業形態」を選択できる働き方を求める人が増加しています。

特に、コロナ禍の中でリモートワークなど「働く場所」を選ぶ働き方が広がりました。企業に勤務する中でのリモートワーカーも増えましたが、個人事業主・副業としてオンラインをインターネットでジョブマッチングを行うプラットフォームワーカーが増加しました。個別・多様化する働く意識や希望する働き方とキャリアに合わせて、勤務場所や勤務時間を選び、それぞれのワークスタイルに合った働き方をとることが普及するようになりました。

より詳しく就業者の価値観の変化を見ていきましょう。

就業価値観の推移

会社の発展のために尽くすという意識は薄まり、自分や家庭を大切にするという考えがより強まってきています。

2000年 会社のことより、自分や家庭を優先したい 66%
2020年 会社のことより、自分や家庭を優先したい 79%

2000年 自分の仕事の目的は会社を発展させることである 58%
2020年 自分の仕事の目的は会社を発展させることである 49%

大学生の価値観

大学生の価値観を確認してみましょう。
働きたい組織の特徴としては「若く新しい企業」よりも「歴史ある企業」が支持されています。

意思決定なども、「迅速性やりも正確性を重視する」(75.9%)などスピード感よりも正確性を重視する傾向があります。

給与に対する価値観では、給与は実力主義よりも周囲との大きな差が生まれないことや、給与が高くなくとも休暇制度などが充実する方を好む人が増えています。

自身の成長においては、体力的・精神的なストレスが掛かってまで成長するよりも、成長は遅くとも、体力的・精神的なストレスが掛からないことを大切にしています。

「短期で成長できるが、体力的・精神的なストレスが掛かる」29.3%
「短期での成長はしにくいが、体力的・精神的なストレスが掛からない」70.7%

私は約20年前の学生ですが、体力的・精神的なストレスが掛かっても、短期での成長を希望していましたし、周囲の方も「成長したい」そのためにはむしろストレスが掛かって当然と思う人が集まっていました。企業も、個人に対しての急成長を望んでいましたし、それも採用におけるPRポイントだと考えていたと思います。

今、若手人材を採用するときには、「ストレスが掛かるが成長ができること」は魅力的なPRポイントにはなりづらいようです。

人材と企業の関係性

【人材】
人材が企業に望むこととして、「長期雇用の下で上司の指示に従い組織的に業務を遂行する」など、これまでと同様の働き方が好む労働者も多く存在する。

一方、仕事に対する価値観や生活スタイルの個別・多様化や、変化する環境に対応する必要性を背景にして、自発的なキャリア形成と、ライフステージ・キャリアステージにあわせた多様な働き方を求める労働者も増えています。

【企業】
企業を取り巻く環境、労働市場の変化に対応するためには、企業にとって長期的な視点に立って優れた人材を確保し活用することが重要になっています。

今後の人生 100 年時代においては、企業はこれまでと比べ、「柔軟な発想で新しい考えを生み出すことのできる能力」を重視する方向に向かうと考えられています。

柔軟な発想で新しい考えを生み出すことができる能力を重視するのであれば、企業は、働く人に対して、正規雇用・非正規雇用等の雇用形態にとらわれず、全ての働く人が希望に沿って働き方を柔軟に選択し、能力を高め発揮できる環境を提供する必要があります。

また、働く人も、自発的に働き方とキャリアを選択した上で、企業に対して能力を発揮し成果を上げることが求められています。

企業が感じている課題

企業は、労働時間と成果がリンクしない働き方をしている労働者に対して、労働時間を厳格に管理しつつ生産性を向上させることに課題を持っているようです。

多様で主体的なキャリアの実現、拡大する新たな働き方等に対応できるよう、労働者とコミュニケーションを図り同意を得た上で労働時間制度をより使いやすく柔軟にしてほしいという希望も見受けられました。

労働者の働き方の価値観

労働者の希望する将来の働き方は多様で、その中で「なりゆきに任せたい」「わからない」とする労働者(56.5%)が一定存在しており、自らの働き方について明確な意思を持っていない層も多いこともうかがえました。

仕事の裁量については、手順(53.3%)、時間配分(54.4%)、場所(47.2%)ともに自らの裁量を増やしたいという層が一定存在する。さらに、それを職種別に見ると、時間配分の裁量の希望については管理的職業(3%)や専門的技術的職業 (63.2%)においてその割合が高く、年収が高いほどその傾向が強まっているようです。(300 万円未満:45.6%、1000 万円以上: 71.5%)

自分の働き方により明確な意思を持つ人ほど、年収が高く、特に意思がない人は年収が伸び悩む傾向にあるのではないかと思います。そのため、多様な人材を雇用するためには、企業がすべての社員に対して同じ労務管理をすることは難しくなっていると感じます。

一つの企業で長く働くことをこれまで以上に重視する層(57.9%)も多く、安定志向がうかがえます。企業に長く勤めたい一方で、今後仕事よりも仕事以外の生活を大切にすると回答した層は 74.3%を占め、多くの方が仕事以外の生活を大事にしたいと考えていることがわかります。

自らのスキル・能力を高め、裁量度のある働き方を得る人が増えた一方で、会社に身も心も尽くすこともなく、プライベートなどの生活を重視するが、安定した企業に長く勤めたいという、新しい価値観も生まれてきているように感じます。

新しい価値観に対応するための雇用環境とは

従来通りの働き方に加えて、リモートワークや副業・兼業等、働く時間や場所が多様化した働き方が増えてくる中で、労働基準法制が想定していなかった状況が広く現れています。

また、育児や介護等や自己啓発などを実践する働く人からも、仕事とプライベートを両立できる柔軟な働き方へのニーズは、年齢や性別を問わず高まってきています。

そして、心身の健康を確保しつつ、能力を存分に向上、発揮できる柔軟な働き方を求める働く人も増加しています。

そのため、これからの企業の雇用管理・労務管理においては、「画一的」なものだけではなく、「多様性を生かす」、そして、主体的なキャリア形成が可能となるような環境を整備することが求められるようになっています。

企業においては、「多様性を生かす」労働環境整備を進めることに追って、採用において有利に働き、また人材確保につながっていくのではないでしょうか。

労働基準法制については、その対象とすべき労働者の範囲や、事業場を単位とした規制がなじまない場合における適用手法も含め、こうした働き方と雇用管理・労務管理の変化を念頭に、その在り方を考えていくことが求められています。

働く人が求められること

多様な働き方が当たり前となる中で、新型コロナウイルス感染症の流行等は、働くことの意義と働き方に対する働く人の考え方の個別・多様化を進めましたが、不確実な時代の中で、その傾向はこれからも強まると考えられています。

不確実な時代の中で働く人が幸せな職業人生を実現するには、自分の力で働き方を選択し、キャリアプランを描けるようになることが大切だと説いています。

そのために以下のようなことを大切にする必要があります。

・働く人は業務遂行の面でも健康管理の面でも自己管理能力(セルフマネジメント力)を磨くこと

・働く人は企業あるいは労働市場においてどのような人材が求められているか、自らの望む働き方やキャリアに求められる能力は何かを明確にした上で、自主的に能力開発に取り組むこと

・働く人にとって、労働基準法制を正しく理解し活用すること、そのために国、企業等による教育や情報提供を活用して法制度の理解を深めること

・働く人が自らのキャリアについてより適切に判断していくためにも、また、職場環境の改善を企業に求めていくためにも、働く人同士のネットワークを構築していくこと

今までは、企業に勤めの方は、先輩社員に習いながら、ライフプラン、キャリアプランを漠然と知り、自分の意思でのキャリア形成をしてこなかった層も、今後はより一層自分自身の明確な意思を持ち、生き方・働き方を考えることが求められるようです。

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