引き続き残業に関するコラムですが、今回は希望する企業が見つかった時に、残業代の支払いの有無や残業時間をどのように確認するか、について話したいと思います。
エージェントが入っていない場合は、面接の際で直接聞くことになりますので、その際に陥りがちな誤解や対策をお伝えしたいと思います。
第四、残業代支払いの有無を確認する方法
1. 求人票で確認
基本的には求人票に「残業代の支払の有無」という項目はありません。なぜなら、残業代の支払いは法律で定められた企業の義務であり、「支払無し」という選択はできないからです。従って、全ての企業が残業代の支払いをしているという「建前」で求人活動を行うことになります。しかし、実際には払っていない企業もあるのはご存知の通りです。
※裁量労働制や年棒制など残業代が発生しない雇用形態もあります。
2. 面接での確認
確認するためには面接官に直接聞くしかないと思います。大きな会社でも支払っていない会社もありますし、小さな会社でも支払っている企業もあり、一概には言えません。当社のようなエージェントが間に入っている場合は、その様な気まずい質問も聞いてくれるはずです。本人が直接聞くときは印象を悪くしないように聞き方に配慮して下さい。
3. 注意点
「残業代を支払っている」と回答する企業でも、本当に残業代を全額払っているとは限らないことにも注意が必要です。例えば、30時間までの残業代は基本給に含めていることがあります。営業職では営業手当として定額の残業代が設定されていることが良くあります。その場合も企業は、「残業代を支払っています。」と回答することになります。
また、「社員から申請された残業代は全額支給しています。」と回答された場合も注意が必要です。申請されたら支払うが、社員は誰も申請をしておらず、実際には残業代を支払っていないケースもあります。
上記のような企業の説明は、嘘ではありませんが、企業からされた説明と、それに対する応募者の期待との間に大きなギャップがあることは間違いありません。ですので、残業代の支払いについて重視している方は、「残業代は全額支払われるのでしょうか、込みになっている部分はありませんか。」とはっきりと聞いた方が良いと思います。「社員が申請して・・」という言葉が出たときは、「みなさんどの程度申請されていますか?」と突っ込んで聞いてください。
決して印象が決してよくない質問ですので、リスクはあります。しかし、残業代は年収だけでなく、働くモチベーションにも影響します。重視したいポイントだと考える方は聞いてください。企業様から理由や状況をしっかり説明してもらえれば、たとえ全額支給でなくても、企業に対する信頼は増すと思いますし、それを曖昧にごまかす企業様だと不信を持ってしまいます。聞きにくいことだとは思いますが、求職者も企業を選ぶ側ですので、信頼できる企業かどうか判断するためにも聞いた方が良いのではないかと思います。ただ、繰返しにはなりますが、聞き方には配慮と誠意が必要です。
第五、残業時間の確認方法
1. 残業時間
残業時間を知るためには、これも企業に直接聞くしかありません。正確に平均残業時間を把握していない企業も多く、その場では正確に応えることが難しいこともあります。その場合は、「普段何時くらいまで働かれていますか?遅い日だと何時くらいでしょうか?」など具体的な質問の方が良いと思います。
「普段は7時くらいには終わっているが、遅い日だと9時10時までしています。」という回答だと、毎日1時間程度の残業ですので22日勤務とすると、22時間。それにプラス遅い日の分で月平均30時間位かなと推測します。流れによっては「遅い日というのは月に何日くらいありますか?」と突っ込んで質問するとより正確に推測できます。
2. 印象を悪くしないための注意点
質問の際には、残業を嫌がっている印象を与えてしまわないように、「仕事では残業はつきものだと思っています。業務のために通常必要とされる残業は厭いません。」と前向きな考えを事前に伝えたり、「家族もいますので9時までには家に帰りたいと思っています。」など、希望と理由を説明することも大切です。
第六、まとめ
残業代の支払いをどこまで重視するかは本当に人によります。重要視していない人も、企業の誠意を探るために聞いてみる方が良いのではないかと思います。
重視している人も、全額の支払いだけにこだわらず、その他の制度や時期による残業時間の増減など広い質問をして、残業に関する制度設計の真意をお伺いすると良いのではないかと思います。健康に長く働いてもらうために基本給を高くして、残業代を込みにして残業を減らそうと考えている企業様もあります。反対に、残業代を全額支払う代わりに基本給を低くしている企業もあります。
どちらかが正解という訳ではないので、企業の考え方をしっかりとお伺いし、信頼できる企業なのかどうかをご自身で判断することが一番大切だと思います。