「まだ転職先は見つかっていませんが、先に会社を辞めてもいいでしょうか?どう思いますか?」
このような相談を受けることがあります。一般論としては、仕事を失うことは社会的リスクですので、転職先を見つけてから退職することをお勧めしています。
しかし、35歳未満の転職経験者の45%は、離職後に再就職先を決定しているというデータがあるそうです。つまり、半数近くが先に会社を辞め、その後、転職に成功しているということです。
では、その人たちは先に退職し、後悔はしていないでしょうか?
失業中であっても、希望を持ち、のびのびと転職活動している人もいれば、将来に対する不安や前職に対しての怒りなどネガティブな感情の中、転職活動を行っている人もいるようです。
実は、このような失業中の心理状態は、「離職理由」に影響を受けることが分かってきています。人による部分もありますが、ある程度予測できる部分もありますので、参考にしてみてください。
代表的な5つの転職理由
転職理由をここでは5つに分類します。あなたが転職を考えている理由はどれでしょうか?重視している理由を1つか2つ、選んでみてください。
1.転職への期待や見込みの高さ
「転職するには絶好の機会だと感じる」「良い転職先が見つかりそう」
2.人的環境・方針不満
「仕事で関わる人と意見が合わない」「会社の方針に不満がある」
3.自己の能力不足の認識
「仕事で自分の限界を感じた」「職務的な難しさを感じている」
4.労働条件不満
「仕事に対して給料が少ない」「労働時間が長い」「休日が少ない」
5.プライベート基準
「仕事よりプライベートを優先させたい」「結婚や出産などのライフイベントがある」
失業中でも、前向きな気持ちで過ごせる転職理由
失業中も、「希望や肯定感」を持って転職活動できる転職理由があります。
「転職への期待や見込みの高さ」もしくは「プライベートを優先するため」に退職をする場合です。
特に、プライベートを優先するために転職した場合は、最もポジティブな状況で、失業中が過ごすことができるそうです。加えて、怒りや不満も感じにくいという結果となったそうです。
例えば、
- 割り切って考えようという気持ち
- 自分なら何とかできるという気持ち
- 何とかなるだろうという気持ち
- 退職してよかったという気持ち
- 解放感
- これまでの自分はよく頑張ったという気持ち
- これからやれるだけのことは、やってみようという気持ち
などを感じるようです。
こんな気持ちで、転職活動ができると良いですね。
失業中、ネガティブな気持ちになってしまう転職理由
「人的環境・方針不満」から退職した場合、失業中に「怒りや不満」を感じることが多くなるそうです。
会社の人間や方針に不満があった場合は、
- 誰かを責めたい気持ち
- 何かに対する怒り
- 自分に対する周囲からの信頼の喪失
- やりきれなさ
などを感じてしまいやすいようです。
また、「自己の能力不足の認識」から退職した場合、失業中に「不安や後悔」を感じることが多く、
- 将来に対する不安
- これからどうなるのかという焦り
- いらだち
- 自分はだめな人間だという気持ち
- 家族や周囲の人に対する申し訳なさ
を感じるようです。
特に心理的に変化はない転職理由
「労働条件不満」から退職した場合、失業中に感情に与える影響を確認できませんでした。
条件面の向上を求めることと、失業中の感情は関係がないようです。
失業中に不安や不満を抱えないために
会社の人間関係が悪かった、会社の方針に不満があった、自分の力不足で会社を辞めざるを得ない・・という方は失業中、不安や怒りにさいなまれる可能性もあります。
そうならないためには、出来れば転職活動を先に行い、転職先を見つけるか、せめて見通しを立ててから退職する方が良いと思います。
まずは、「転職エージェントに登録をしてみる」「求人サイトを見てみる」などをして、自分がやりたいと思える仕事などを探すことを初めてみると良いかもしれません。
すでに会社を辞めてしまい、不安や不満が募ってしまう
不安や不満がある中で、転職活動を行うと、面接時に前職のことを必要以上に悪く言ってしまうなど、転職活動にもマイナスの影響が出てしまうこともあります。
そもそもの転職理由を変えることはできませんが、「ちょうど良い転職の機会になった」と新たな考えに切り替えていくことも大切です。能力不足でやめざるを得ない状況となった場合でも、「より自分の適性に合う仕事を選ぶチャンスだ」と思うように考えてみてもよいかもしれません。
また、この転職をきっかけに、プライベートも大切にするという視点を取り入れるとよいかもしれません。今まで、できなかったセルフケアや、自己研鑽、家族との関係を見直したり、旧友を温めることで、新しい気付きを得て、人生をより豊かにできるかもしれません。
失業して時間があることをネガティブにとらえず、「ゆとり」のある生活だと捉えることができることで、前向きに気持ちで転職活動に挑めます。仕事が決まるまでの時間を健康的に、より良く過ごしてください。
【参考】
南裕子、岡田昌毅『離転職理由が失業中の感情に与える影響:転職を目的とする若年離職者に焦点を当てて』 産業・組織心理学研究 2019年 第32巻 第2号 127-137
リクルートワークス研究所『ワーキングパーソン調査2014』