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精神的健康が生産性向上につながる!精神的健康を保つためにできる工夫とは。

2025.06.30

生産性向上において、“従業員の精神的健康(メンタルヘルス)”が非常に高い効果を発揮することはご存じでしょうか?

人手不足が深刻になり、物価高上昇・人件費増となる中、多くの企業が生産性向上を目指しています。その中でも、業務の効率化、DXやIT化、社員の適切な人員配置、アウトソーシングの活用などを取り入れる企業は多いと思います。

しかし、“従業員の精神的健康”を考慮している企業はまだ日本では少なく、今後は従業員の精神的健康への対策をする企業とそうでない企業との大きな差が開いてしまう可能性があるとされています。

“従業員の精神的健康”は、目に見えにくく、生産性としての数字として見落とされがちになるため、企業経営・人事においても優先されにくいことだと感じます。また、忍耐や根性によって、社会的に成功をしてきた方にとって、“従業員の精神的健康”を考慮することは、自身の価値観との大きな隔たりを感じ、従業員の甘やかしにもつながるように感じるのかもしれません。

しかし、これから誰もが経験したことのないような人手不足時代に突入します。豊富な人材供給がなされていた時代では、離職を前提とした採用を行い、厳しい労働環境の中で生き残った精鋭たちだけで構成するような組織運営はもう成り立たなくなっているのです。採用の難易度がますます高まる中で、従業員のメンタルダウンからの離職、そこから新たな新規採用にかかるコストの増大、また思ったような人材が採用できず、定着しないという悪循環は経営環境を大きく悪化させます。

実際に、2024年には、人手不足倒産が過去最多を2年連続で更新し、特に従業員の退職による人手不足倒産が増加しています。

精神的不調な従業員の生産性は30~40%ダウン

精神的に不調な従業員は出勤していても、集中力が低く、通常の60~70%程度のパフォーマンスしか発揮できないとされています。また、うつ症状を抱えながら従業員が出勤して勤務している場合、企業の損失は欠勤による損失の2倍以上になるということが、米国の研究で報告されています。

また、日本生産性本部の調査によると、メンタル不調による休職・退職は企業の間接コスト増加の主因となり、企業経営全体での生産性を著しく下げる要因にもなってしまいます。

ちなみに、一人当たりの採用単価は、新卒採用の場合で約93.6万円、中途採用の場合で約103.3万円が平均的な相場と言われ、今後はよりその単価が高まっていくだろうと感じます。

つまり、従業員の精神的健康(メンタルヘルス)が保たれる職場環境では、労働生産性が高まり、離職や採用の無駄なコストが発生しない、生産的な環境と言えます。

成果をあげてきた管理職は、自身への厳しさがあるため部下に対して指導が厳しくなる傾向もあります。以前はその結果、指導による離職が続いたとしても、大きな問題になってこなかったかもしれませんが、部下の離職が続く管理職となると、その評価が下がる可能性が十分にあります。

成果にこだわることと、部下のメンタルヘルスの両方を考えられることが重要だと感じます。

日本企業で精神的健康が重視されにくい背景

「体調管理」は社会人の基本だと認識している人は多いと思いますが、精神的健康な状態といわれるとそれが一体どのような状態なのかと、具体的にイメージがわきにくいのではないでしょうか。

特に、日本では、精神的疾患に対する偏見が根強くあり、心の問題を口に出すのは恥ずかしい、弱い人だと思われるという考えが社会的に根強くあります。また、長時間労働・同調圧力の強い職場文化が長らく続く中、我慢が美徳となり、自己犠牲が評価さる傾向にあり、メンタルの不調があってもそれを問題だと本人も捉えにくい環境となっていたのではないかと思います。

また、メンタルヘルスについての教育や研修を受けていない管理職が多く、特に成果を上げる方の多くがメンタルが強く、組織内にメンタル不調を正しく理解し、対応できる人材も少ない傾向となっています。

日本では精神的健康が政策として本格的に取り組まれ始めたのは2000年代以降となり、欧米に比べ20~30年ほど遅いともいわれ、精神的健康についての理解が社会全体で進んでいないように感じます。

精神的健康とはどのような状態なのか

それでは、精神的健康とはどのような状態を指すのでしょうか。単に「ストレスがない」状態を指すのではなく、以下のようなポジティブな心理的・社会的な状態がバランスよく保たれていることを指します。

【感情の安定】
・不安・イライラ・落ち込みなどが継続しておらず、気持ちが落ち着いている
・自分の感情を客観的に捉え、適切に表現できる

【意欲とモチベーションの維持】
・仕事やプライベートに対して前向きな気持ちがある
・「やってみよう」「達成したい」と思えるエネルギーがある

【自己効力感(やればできるという感覚)】
・自分の力で課題を乗り越えられるという自信を持っている

【良好な対人関係】
・上司・同僚・部下と円滑なコミュニケーションができる
・孤立していない、助けを求められる環境がある

【適応力・柔軟性がある】
・変化や困難に直面しても、必要に応じて考え方や行動を調整できる

【自己肯定感がある】
・自分を価値ある存在と認識しており、過度な自己否定がない

実際に、自分自身が精神的健康である、また周囲の同僚や部下が精神的健康だといえる方はどの程度いるでしょうか?上記のような状態の社員が大半であれば、生産性が非常に高く、イノベーションが生まれそうな職場であると感じるのではないでしょうか。

精神的健康を保つためにできる工夫とは

また、自分自身でも精神的健康を保つためには、日々の生活や働き方の中で自ら工夫し、意識的に心のバランスを整えることが大切です。

まず、心身の基本となる生活リズムを整えることが重要です。規則正しい睡眠やバランスの取れた食事、適度な運動を心がけることで、心の安定にもつながります。

また、日々の業務の中で小さな達成感を得ることも効果的です。ToDoリストを活用して一つひとつの業務を着実にこなしていくことで、「自分はできている」という実感を持つことができ、自己肯定感の向上につながります。あわせて、適度な休息やリフレッシュも欠かせません。短時間でも意識的に休憩を取り、業務後や週末にはしっかりと気分転換を図ることが、心の疲労回復に役立ちます。

さらに、信頼できる人と話す時間を持つことも、精神的健康の維持には欠かせません。家族や友人、同僚などに悩みや不安を打ち明けることで気持ちが整理され、孤立感を防ぐことができます。日常の中で「自分を責めすぎない」「できたことに目を向ける」ことを意識することも、自己肯定感を育てるうえで有効です。たとえば、毎日ひとつでも「今日よかったこと」をメモするだけでも、前向きな気持ちを保ちやすくなります。

情報との付き合い方にも注意が必要です。SNSやニュースを長時間見続けると不安や疲労感が増すことがあるため、情報の量や内容を意識的にコントロールし、なるべくポジティブな情報に触れるようにしましょう。

最後に、職場での心理的安全性を保つためにも、自分の限界に気づいたときには無理をせず、早めに上司や同僚に相談することが大切です。また、チーム内で「ありがとう」や「助かる」といった感謝の言葉を日常的に交わすことで、信頼関係が深まり、安心して働ける雰囲気が生まれます。

このように、ちょっとした工夫や習慣の積み重ねが、精神的な健康を保ち、安定して働き続けるための土台となります。

人的資本経営が注目される背景とは

近年、人的資本経営が注目されていますが、その中でも特に重要なことの一つが、従業員の精神的健康(メンタルヘルス)と言われています。

従業員の精神的健康は人的資本の基盤となり、生産性の向上・維持に直結、エンゲージメント(仕事の熱量)を高め、人材の価値を最大限に引き出します。今後は、人的資本に投資しその価値を最大化する企業と、そうでない企業には埋めがたい差が生じると予測されています。

日本において人的資本経営が求められる背景のひとつが、深刻な人手不足と労働力人口の減少です。生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減少し続け、今後もその傾向はより強まっていきます。

そのため、今までのように人材を一時的な「コスト」として扱う、豊富な労働力供給を前提とした雇用管理・労務管理から脱却し、限られた労働力の中で、人材をいかに確保し、定着させ、活躍してもらうことが企業に迫られています。また、企業価値の源泉が「モノ」から「ヒト・知的財産」へとシフトし、特にデジタル産業やイノベーション型企業では、人材こそが最大の資産だと考えられています。

ESG投資※の拡大により、投資家や市場は企業の人的資本への取り組みや情報開示を重視するようになりました。日本でも、人的資本可視化指針の策定により開示が本格化しています。

そして近年では、従業員の健康やウェルビーイングが生産性やエンゲージメントに直結するという認識が広まり、メンタルヘルス対策やストレスチェックなどを含む健康経営も、人的資本経営の重要な要素となっています。つまり、人を「資本」としてとらえ、育成・活用していく人的資本経営の考え方、つまり、「ヒトを守ること」が「企業を守ること」になり、持続的な企業成長の鍵となると考えられています。

※ESG投資とは、企業の環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)への取り組みを評価して行う投資のことです。従来の財務情報だけでなく、これらの非財務情報も考慮に入れることで、長期的な視点で企業の持続可能性やリスクを評価し、より良い投資判断を行うことを目指します。

自分自身の精神的健康を守る

働き方改革やハラスメント対策が進み、以前より精神的健康を保ち働きやすい企業が増えてきました。

一方で、まだまだ精神的健康を保ちにくい職場もあり、うつ病などを患う人材も中にはいらっしゃいます。企業が精神的健康を保てる環境づくりを目指すことは重要ですが、働く皆様も自分自身の精神的健康を守るという意識も大切です。

今の職場で、精神的健康を保つことが難しいと感じることがあれば、誰かに話を聞いてもらい客観的な視点で現在の職場に問題がないかを確認してもらうこと、そして転職を視野に入れることも大切です。

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