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育休を推進する企業にメリットの大きな助成金制度が新設「業務フォロー手当」のご紹介

2025.01.28

2024年1月、業務フォロー手当助成金の制度が始まりましたが、ご存じでしょうか?

これは、育休中や時短勤務社員の業務をフォローする同僚に対して手当を支給した企業が、国から、支給手当した金額の3/4~4/5にあたる助成金を受けられるという内容です。

正式名称は、両立支援助成金「育休中等業務代替支援コース」。

助成金の金額も大きく魅力的です。また、社員のモチベーションアップにもつながり、魅力的な福利厚生として採用広報にアピールできる内容ですので、企業には導入・使用をいただきたい制度となります。

制度設立の背景

優秀な女性を雇用する企業が増え、働きながら子どもを産み育てることも徐々に当たり前になってきましたが、育休や時短勤務社員をカバーする社員の負担が課題となっています。

「子持ち様」と子育て社員を揶揄する言葉まで生まれてしまい、子育て社員と独身者の分断が生まれてしまう問題にも発展しています。

特に、女性の業務については適切なマネジメントがされていないこともあり、女性の負担は女性でカバーする風潮があり、不足の人員の補充がされないことや不足分のカバーに対しての評価がないことがほとんどです。

一方で、若年層では男女問わず、「共働き」「育休を取って積極的に子育てをしたい」が半数以上です。2023年卒では、共働きを希望する女性は74.5%、男性は59.9%。育休を取って積極的に子育てしたい女性は68.0%、男性は59.9%です。特に共働き、育休を取得したい男性は年々上昇していることが以下のグラフからも読み取れます。

※「マイナビ2023年卒大学生のライフスタイル調査」(2022年)を基に、厚生労働省労働基準局労働条件政策課において作成したグラフを引用。

これからの人材を獲得したい企業にとって、育休制度を充実させることは雇用を確保するためにも、重要な施策になってきます。

実際、男性の育休取得も増加傾向にあり、2022年度は全体で17.13%、大企業では46.2%に達しました。2023年4月から大企業に育休取得状況の公表が義務化され、2025年には中規模企業にも拡大予定ですので、それに伴い中小企業での男性の育休取得も増加が見込まれます。

今後もますます男女問わず育休取得者が増えることが予測されますが、育休経験者が取得で不安だったことには「周りへの申し訳なさ」が挙げられ、女性27.0%、男性15.5%に達しています。(就職情報サイト運営のマイナビの調査)

育休取得者も周囲の社員も気持ちよく働くために

社員が気持ちよく働くためには、子持ちとそうではない層の分断を防ぐためことも大切です。そして、人手不足がますます進む中で、子を持つ親が労働市場で働き続けられる環境を整備することが大切です。

定年も伸び、誰しもが長期間働く時代になっています。子育て、自身の病気、介護などライフステージの変化の中で、休まず働き続けられる人ばかりではありません。大切なことは多様な人材が働き続けられるよう、休みが発生することが予見される中では、業務をカバーできる体制づくりを行うマネジメント・人事制度づくりの見直しが求められています。

マネジメントにおいては、「業務の見直しを行い、業務負担を減らす」「人員増の配置を行う」ことで業務を推進し、制度としては「育休社員のカバーした分の手当を支給する」ことで不公平感をなくすことにつながります。

人手不足な状況を既存社員で穴埋めを続けていることで、離職率が高まるケースはよく聞きく話です。子育て社員やその周囲の社員が解決をゆだねると、社員同士の分断が起きてしまう可能性があるので、重要なマネジメントと捉えることが大切です。

話は長くなってしまいましたが、「育休中等業務代替支援コース」を具体的にご紹介致します。

育休中等業務代替支援コース

<対象企業>
従業員300人以下の中小企業
2024年1月に始まったこれまでの制度では、対象は、小売業では50人以下、サービス・卸売業では100人以下の中小企業に限られていました。2025年度からは、全ての業種で、「従業員300人以下」の中小企業が対象となります。

徳島県のほとんどの企業が対象になります!ぜひ、皆様ご活用ください。

<助成金>
補助対象:企業が、育児休業者の業務をカバーする社員へ手当の支給を行った金額に対する補助金
金額:企業が育休取得者をフォローする社員に業務手当を支給した4分の3
支給の上限:育休取得者1人当たり月10万円。年間の上限1200万円
支給の期間:12か月間。年間10人分の育休取得者についての申請が可能

具体的な事例で考えると、例えば3人の部署で、そのうち1人が育児休業を取得する場合、企業から同僚2人に対して、毎月4万円ずつ育休の業務フォロー手当が支給されるとします。その場合、企業が負担した月8万円のうち、4分の3にあたる6万円が、毎月から助成されます。

企業への金銭的負担は少ない状況で、社員に手当を支給できるため、導入する企業にとっても、手当を受ける業務をフォローする社員にとっても、子育てを安心して行える社員にとっても、とても良い制度だと思います。

なお、プラチナくるみん認定事業主は、5分の4に割り増しして支給され、社労士を採用するなどして労務体制の整備に取り組んだ企業には、業務体制整備経費として5万円が追加して支給されます。

簡単に表にまとめていますので、ご参考にご活用ください。

実際に、助成金を活用されたい場合は、厚生労働省のパンフレットやリーフレットをご確認して申請をお願いします。

対象支給要件支給金額
①育児休業取得者を
フォローした社員
・業務の見直しや効率化を図ること
・フォロー手当の制度などを
就業規則に規定
・7日以上の育児休業の取得
・フォローした社員への手当等の支給
①業務体制整備経費:5万円
(育休1カ月未満の場合は2万円)
② 手当支給総額の3/4
※プラチナくるみん認定の事業主は、4/5
(上限10万円/月、12か月間)

  ①②の合計額(最大125万円/人(12か月間))
②短時間勤務
利用者を
フォローした社員
・業務の見直しや効率化を図ること
・フォロー手当の制度などを就業規則に規定
・1ヵ月以上の短時間勤務の利用があること
・フォローした社員への手当等の支給      
①業務体制整備経費:2万円
②手当支給総額の3/4
(上限3万円/月、子が3歳になるまで)

  ①②の合計額(最大110万円/人(3年間))
③育児休業取得者の代替要員を
新規で雇用
(派遣社員を含む)
・代替要員を新規雇用または派遣社員として雇用すること
・7日以上の育児休業の取得
・代替要員が、休業者の業務を代替すること
代替期間に応じた額が支給されます。
最短:7日以上14日未満      9万円
最長:6か月以上         67.5万円
の5段階  

※ プラチナくるみん認定事業主は助成額が加算され以下の金額になります。
最短:7日以上14日未満 11万円
最長:6か月以上 82.5万円など 
5段階

表③の、育休取得者の代替要員として「新規雇用」の助成金の対象となるには、育休の代替要員が必要になってから、新たに雇い入れた人材でなくてはなりません。雇用契約の始期は、事業主が、育児休業取得者(男性の場合はその配偶者)の妊娠の事実を知った日以降である必要があります。

また、一定の場合には、助成金の支給額が加算されます。上記①~③の助成金の対象の育児休業取得者や短時間勤務制度の利用者が、 有期雇用労働者の場合には、支給額が10万円加算されます。さらに、自社の育児休業取得状況等に関する情報を、指定のサイト上(『両立支援ひろば』サイト上)で公表した 場合、支給額が2万円加算されます。 ※最初の1回に限り対象となります。

詳細については、厚生労働省リーフレットでご確認ください。

参照:厚生労働省リーフレット~両立支援等助成金に「育休中等業務代替支援コース」を新設~https://www.mhlw.go.jp/content/001218930.pdf

業務をフォローする社員に対する大手企業の取り組み

このような流れの中、大手企業では、育休中等の社員の業務をカバーした同僚に対して、独自に手当を支給する動きが見られています。いくつか事例をご紹介します。

●サッポロビール
1か月以上の育休取得者の役職や休業期間に応じた金額を、業務をカバーした社員のボーナスに上乗せして支給。2024年夏のボーナスより支給を開始しました。
例えば、係長クラスが1カ月以上の休業を取得すると、業務をフォローした社員のカバーした業務割合に応じて、約6万円で分ける想定です。
同社は2023年、男性の育休取得率が100%を達成しましたが、2週間以内の取得にとどまるケースが約56%にのぼり、育休を取りやすい環境の整備として、業務フォロー手当を導入しました。

●タカラトミー
2024年7月から試験的に、育休取得者の部署の社員に対して「応援手当」の支給を導入しました。手当の金額は、育休社員の給与を基に算定しています。

●沖電気工業
2024年4月から手当を導入して、1カ月以上の育休を取った社員の業務を支援した同僚に、最大10万円の手当を支給します。

●三井住友海上火災保険
育休取得者と同じ職場で働く同僚に、最大10万円の一時金を支給し、2024年4月までに約9千人がその手当を受け取っています。

まとめ

人員がある程度充足していると思われる大手企業でも、育休カバー手当を行うなどの対策を行っています。人手が不足しやすく人員増が難しい中小企業こそ、積極的に手当をつけることで、育休等を取得する人もその周囲で業務をサポートする仲間も、納得して働けるのではないでしょうか。その意味でも、この助成金を積極的に活用してみてはいかがでしょうか。経験のある人材の離職を防ぐための重要な制度設計の一つになっていくと思われます。

職場内での不公平感は、軋轢を生み生産性を低下させてしまいます。育休や時短勤務を取得する社員をカバーする社員が、前向きにサポートしようと思える環境づくりをすることが企業側のできるマネジメントでもあり、経営です。また、産休育休から復帰したメンバーも、自分のせいで迷惑をかけていると思うことで離職につながることもあります。両者へのフォロー体制や評価を行う体制が、今後一層求められるでしょう。

採用においては、求人票に育休者の業務フォロー手当あり、の記載があると、子育て世代にも、その他社員にも配慮の行き届いた会社という印象を得ることができ、採用強化にもつながります。ぜひ、2025年度からは徳島県の多くの企業に「育休者の業務フォロー手当あり」を導入いただきたいと思います。

参照:
・日本経済新聞2024年10月13日
・徳島新聞2024年7月21日
・ハフポスト日本版2024年4月3日
https://www.huffingtonpost.jp/entry/komochisama_jp_6609f770e4b0c4621eb7702b
・厚生労働省リーフレット
https://www.mhlw.go.jp/content/001218930.pdf
・厚生労働省パンフレット 12両立支援等助成金(4)育休中等業務代替支援コースhttps://www.mhlw.go.jp/content/001238716.pdf

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