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「3歳以上の子を養育する親」への時短勤務やテレワークなど柔軟な働き方の整備の義務化が始まる。【2025年4月、育児・介護休業法改正】

2024.06.28

夫婦共働きなどや多様な働き方が求められる中、育児・介護休業法改正が毎年のように行われるようになってきました。

2022年に、男性が妻の出産直後に育児休業を取得できる「出生時育児休業」の導入。
2023年は、男性の育児休業取得状況の公表の義務化がありました。
2024年には変更はありませんが、2025年4月(予定)では大幅な変更予定が予測されます。

2025年4月に予定される育児・介護休業の法改正においては、特に、育児と仕事の両立を実現するため、3歳から小学校入学前の子どものいる従業員を対象に、『始業時刻等の変更、テレワーク、新たな休暇の付与(10日/年)、短時間勤務制度』など2つ以上を企業が導入することが義務付けられる、残業免除の対象になるなど、 “柔軟な働き方”を実現するための内容です。

現行法では、子が3歳になるまでの期間は、時短勤務を企業は義務付けられていますが、子が3歳を過ぎてフルタイム勤務で働ける環境がない社員も多く、その場合、離職もしくはパートへの雇用形態の変更を余儀なくされるケースが多かったようです。また、今後は小学1年生~3年生までの期間の引き上げも予定されているとのこと。「小1の壁」※を乗り越えられる子を持つ親も増えてくることが期待されます。
※保育園通園時よりも下校時間も早く、行事も多い小学低学年において、フルタイム勤務ができず、子が小学1年生になり離職せざるを得なくなることを言う。

“子の年齢に応じてフルタイムで残業をしない働き方やフルタイムで柔軟な働き方を希望する割合が高くなっていくこと(女性・正社員)などから、男女とも希望に応じて仕事・キャリア形成と育児を両立できるようにしていく必要がある”というのが、2025年の改正の趣旨となります。

ご登録者の中でも、時短勤務期間が終了することで転職をご検討される方もいましたが、2025年4月に行われる法改正によって、現職に留まることも選択肢として考えられるようになるのではないかと思います。

夫婦共働きが増える一方で、まだまだ女性への家事・育児の負担が軽減されず、6歳未満の子どもを持つ夫婦世帯の1日当たりの家事関連時間は、妻が1日約450分(7.5時間)、夫が約40分~120分程度となっています。

男性が時短勤務などを取得することは難しいと感じるかもしれませんが、この制度は男女問わず使用できるものです。
夫が時短勤務制度を使用することはもちろん、難しい場合はテレワークもしくは新たな休暇などを活用し、夫も育児参加をすることで、妻の負担を軽減し、夫婦ともに育児への参加とキャリア形成の実現を目指すことができる社会となればと思います。

経営・人事が法改正に向けて、備えるべきこと

一方で、経営・人事にとっては制度が大きく変化する中で、事前に対象となる社員が何名在籍するのか、またその期間がどの程度に及び全体の業務量にどの程度影響を及ぼすのか、などを把握することが大切です。

全体像を把握したうえで、会社の仕組やマネジメントの在り方を協議し、リモートワークやフレックスタイムなどの導入も検討する必要があるでしょう。

男性育休の推進に始まり、この度の法改正は、今までの正社員の“フルタイム・残業あり”で組織の在り方を考えていた企業にとっては、あまりにも大きな変化で対応について前向きに考えにくい面もあるかもしれません。

しかし、この法改正は、社員一人ひとりが自分自身や家族の生活を大切にしながら仕事も両立するためのものであり、社員の心身の健康を維持し、モチベーションを高めることで、企業の成長の原動力につながるものになるのではないかと思います。そして、スキルを磨き経験を積んだ方が、継続的に働き続ける環境づくりは、人手不足を解消することにもなります。

また、多くの大手企業などは法改正への対応を行いますし、法改正への対応が進まない企業は、採用競争力の低下を招くものになってしまうのではないかと思います。採用力を向上させることはもちろん、現在在籍する社員の離職を防ぐためにも、法改正の理解、社内での運用を前向きに取り組んで欲しいと思います。

それでは、2025年4月(予定)で変更がある育児・介護休業法についてご紹介します。

改正の概要

2025年の法改正では、以下の1~3がなされ、

.子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充
2.育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化
3.介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等

特に1の内容が大きく注目されています。後ほど、厚生労働省の法改正資料なども添付しますので、このコラムでは1について記載します。

子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充

具体的には①~⑤を通して、柔軟な働き方を目指すものとなります。

①企業は、職場のニーズに合わせて、3歳以上から、小学校就学前の子を養育する社員に対して、以下のいずれかの2つ以上を制度として用意することが求められ、従業員は、事業主が用意した制度のうちの1つを選択して利用できるようになります。

・始業時刻等の変更
・テレワーク等(10日/月)
・保育施設の設置運営等
・新たな休暇の付与(10日/年)
・短時間勤務制度

なお、テレワークと新たな休暇の付与については、原則時間単位で取得可とすること。

②所定外労働の制限(残業免除)の対象が拡大。改正前は3歳に満たない子を養育する従業員が対象でしたが、小学校就学前の子を養育する労働者が請求可能となり、残業免除の対象となります。

③3歳に満たない子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが、事業主に努力義務化されます。

④子の看護休暇が見直されます。
対象となる子の範囲が小学校就学まででしたが、小学校3年生修了までに延長されます。また、取得事由の範囲が広がり、病気・けが、予防接種、健康診断に加えて、感染症に伴う学級閉鎖等、入園(入学)式及び卒園式等が追加されます。

⑤妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮が事業主に義務づけられます。

具体的な配慮の例として、

・勤務時間帯・勤務地にかかる配置
・業務量の調整
・両立支援制度の利用期間等の見直し
・労働条件の見直し等

などが指針で示される予定となっています。

まとめ

具体的な措置として、3歳以上の子を養育する親が、始業時刻等の変更、テレワーク、新たな休暇の付与、短時間勤務制度などから自分にあった働き方を選択できるようになることが注目され、企業はその準備が求められています。

子の養育を行いながらも正社員で勤務していた従業員にとって、キャリアを継続できる機会に恵まれる大きな一歩となるでしょう。

また、この改正法案でさらに注目して欲しいことが、特に⑤の内容となります。

“⑤妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮が事業主に義務づけられる。”

今まで企業は、一律でフルタイム・残業ありで勤務できる従業員(正社員)を中心に構成され、また子が生まれても、企業の業務命令によって勤務地を決定され、従業員の意思に反していても、その拒否権はなく、正社員で働き続けるためには、子の養育を密接に行うことは難しい状況にありました。

企業にとっては、社員の個別具体的な家庭環境に配慮する必要が生まれ、トップダウンの管理型のマネジメントではなく、個々の事情に配慮するきめ細やかなマネジメントが求められるようになります。社員は家庭の事情へ配慮してもらいながら働く機会を得ることができますが、仕事の成果についてはより詳細に把握され、評価されることに繋がります。

この法改正においては、企業・社員双方がお互いを尊重し、理解し合い、また配慮し、成果を上げていくことが求められるため、非常に難易度の高いことだと思います。しかし、優秀な人材が、また多様な人材が働き続けられる組織になるために、とても魅力的な法改正になるのではないでしょうか。

より詳細な解説については、下記の資料をご参照ください。

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