従業員100人超の企業に対して、男性従業員の育児休業取得率の目標を設定し、公表するように義務づける方針が固まりました。
国をあげて「男性の育休取得」を推進していますが、目的は何でしょうか。
そして、男性が育休を取得しないことで起きる弊害はあるのでしょうか。男性育休を推進することで、企業には大きなメリットもあり、採用力向上・離職率防止にもつながるようです。
まだ男性の育休取得推進には消極的だという企業も、男性育休取得推進の是非を判断するためにもぜひご覧いただきたいと思います。
また、これからパパになる方も育休取得について考えるきっかけにしていただければと思います。
男性の育休取得のそもそもの目的
男性の育休取得は、
- 男女の「仕事と育児の両立」を支援する
- 積極的に子育てをしたいという男性の希望を実現する
- パートナーである女性側に偏りがちな育児や家事の負担を夫婦で分かち合うことで女性の出産意欲や継続就業の促進する
- 企業全体の働き方改革を推進する
ことを目的とし、2025年までに男性の育児休業取得率30%を目標にしています。
※厚生労働省の「イクメンプロジェクト」https://ikumen-project.mhlw.go.jp/から抜粋。
弊社コラムでも何度も記載させていただいたのですが、女性の社会進出も増加し、社会的にも人手不足となる中、女性の労働力が期待されています。一方で、女性の家事・育児の負担は軽減せず、女性の産後の就業継続率は高まる中でも、女性の正社員としての勤務継続が難しい状況で、派遣やパートなどの不安定な雇用形態で働かざるを得ない状況はまだ改善しているとは言い難い状況です。
そのような状況を打破する一つの方策が、「男性の育児休業取得」になります。
男性が育休を取得しないことで起きる弊害
「男性が育休を取得することに意味があるのか?」という発言をされる方、お感じになっている方は一定数いらっしゃるようですが、男性が育休を取得せずに、女性のみが育休取得をすると何が起きるのでしょうか?
まずは、女性が家事・育児を担当する習慣がついてしまうことで男性が家事・育児をしない環境に慣れてしまいます。母親の育児スキルは向上し、子どもが母親になつくようになる一方、父親は育児スキルを身に着けることができず、子どもが父親になつかず、父親が育児することがより難しくなってしまいます。
その結果、女性が職場復帰後も家事・育児を継続的に行わざるを得ないようになり、仕事と家事・育児の両立が困難になっていきます。男性の家事・育児の不参加が続けば続くほど、女性の就業が困難となってしまいます。
とはいえ、妻が、あるいは自社で働く社員の妻の就業が困難になることに対して、思いを馳せることが難しいかもしれません。しかし、妻が安定した稼ぎを得ることは、夫にとっても、また給与の引き上げが難しい企業にとっても重要だと感じます。
少し話はそれてしまいますが、給与から天引きされる社会保険料、住民税の引き上げ、消費税率の引き上げなどを含めると、日本人の“実質手取り収入”はこの24年間で、平均で年84万円減という驚くべき数字が算出されています。また、内閣府の調査によると一人当たりの年間子育て費用の総額は未就学児でも約100万円で、年齢が上がる後に金額が増えていき、高校生では150~200万円かかると言われています。
子どもを持ち、家庭を運営していくためには、女性の稼ぎがあることは安定した家庭運営につながり、そのためには企業が男性の家事・育児に参加することを促すことが大切です。弊社にご登録をいただく男性の中でも、家事・育児に参加したいため転職を希望する方は年々増えています。男性の育休取得推進は、男性の離職を防ぐことにもつながるのではないかと思います。
男性も育休を取得することで、育児スキルを身に着けることができますし、子どもも母親だけでなく父親にもなつきます。女性と同様レベルに男性も家事・育児を男性も行う習慣が身に着くことで、家事・育児の負担を父親も担えるような家庭内の環境を作ることができます。
女性の産後の職場復帰の成功には、男性の家庭内での家事・育児の参加が必須事項になるため、女性の社会進出が必要な社会となった今、男性の家庭への進出も同様に必要となってくるのです。
男性の「取るだけ育休」※も問題となっていますが、それはその男性個人固有の問題であり、社会・会社としての制度は推進すべきことに変わりはないと思います。
企業規模ごとの男性の育休取得目標
さて、先にもご紹介したように、この度、従業員100人超の企業に対し、男性従業員の育児休業取得率の目標を設定し、公表するように義務図づける方針が固まりました。
今後、徳島の100名超の企業となりますので、その企業の対応によって、今後の徳島の男性育休取得の推進状況も大きく変わってくるのではないかと思います。
より詳しく内容をご紹介します。
2025年4月から義務化となり、今国会に提出する次世代育成支援対策推進法の改正法は案に盛り込むようです。
改正法では、従業員100人超の企業に策定を求める「一般事業主行動計画」の中に、
・男性の育休取得率
・フルタイム労働者一人当たりの時間外・休日労働時間
などの目標を明記するよう義務付けられています。計画は労働局に届け出て公表し、対応しない企業には、厚生労働省が公表を求めて勧告できるようになります。
・従業員が100人以下の企業・・・公表については努力義務。
・従業員が300人超の企業・・・取得率を公表しない場合は、厚労省が指導や勧告、企業名の公表ができる。
・従業員が1000人超の企業・・2023年4月から男性の育休取得率の公表を義務付けられている。
男性の育児休業取得率の状況は?
2022年度の男性の育休取得率が17.13%と前年度より3.16ポイント上がり、過去最高となりました。
また、1000人超の企業での取得率は2023年6月時点で46.2%となっています。男性育休の取得率公表が義務化される中で、男性の育児休業取得率が急上昇しているため、男性育休の取得率の公表義務化は一定の効果があると言えるようです。
また、以下でもご紹介しますが、また、男性の育休取得率を公表することが、新卒・中途採用の増加にもつながっているようです。男性の育休取得が促進される中、社内の職場風土が改善され、従業員の満足度・ワークエンゲージメントの向上にもつながるという回答もあります。男性の育休取得は、社員の離職防止にもつながると感じます。 それでは、従業員数1000人超の企業での男性育休取得状況の実績をご紹介します。
◎男性の育休など取得率は46.2%
◎男性の育休取得日数の平均は46.5日
◎育休取得率の公表による企業へのメリット
「社内の男性育休取得率の増加」、「男性の育休取得に対する職場内の雰囲気のポジティブな変化」、「新卒・中途採用応募人材の増加」の順で回答が多くなりました。
◎育休取得率向上に向けた取り組みによる効果
「職場風土の改善」「従業員満足度・ワークエンゲージメントの向上」「コミュニケーションの活性化」の順で回答が多くなりました。
男性の育休取得率向上のために、効果的な取り組み
それでは、具体的に男性の育休推進向上のために、効果的な取り組みもご紹介します。
◎情報提供や研修
男性の育休等取得率の高い企業は、「自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供」や「育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施」の取り組み割合が高いようです。
◎直属の上司が育児休業取得の意向確認を行う
男性育休等取得率の高い企業は、個別の周知・意向確認を「直属の上司」が行っている割合がやや高かったようです。
男性育休取得の制度はあっても、自分が休むと現場が回らないとなると、育休取得を諦めてしまいます。男性社員のマネジメントを行う上司の配慮や後押しが育休取得推進につながるようです。
最後に
男性の育児休業取得状況の公表が義務化され、育休取得の実績が向上する中、男性の育休実績がない企業や推進をしない企業は、採用活動や社員の定着率に課題が出てきてしまう可能性があります。義務化がまだ必要のない企業も、ぜひ男性の育休取得推進を目指してみてください。
ま社会全体としても若い世代が子どもを安心して産める・育てられる環境を作るためにも、男性の育休取得を通して、その実現に近づくこと期待したいと思います。