ビジネスでは、運・不運が大きく左右します。では、その幸運を手にする方法はあるのでしょうか?
キャリアの世界には、プランド・ハップンスタンス理論(計画された偶然理論)という考え方があります。
どのような人が幸運に恵まれるのか?を研究したクランボルツという研究者は、多くの事例の中から5つのスキルがあることを発見しました。
それを知れば自分はツイていない、と思っている人も状況を変えるヒントがあるかもしれません。
運が良いと思っている人は、そのツキに磨きを掛けることができるかもしれません。
ぜひお読みください。
幸運とは何でしょうか?
幸運を引き寄せる5つのスキルを説明する前に、少し自分の人生を振り返ってみてほしいと思います。
過去の成功した体験を思い出してみてください。仕事でなくても、勉強でも部活でも恋愛でも結構です。
次に、その成功に良い影響を与えた出会いや予想外の出来事はありませんでしたか?
その出会いや出来事は、あなたがどんな行動をとったことで生まれましたか?
その出会いや出来事がもたらしたチャンスを活かすために、あなたはどんな行動をとりましたか?
運は偶然に左右され一見頼りなく見えますが、必ずしもそうではなく、運を味方につけたるための行動を知らないうちにとっていた、という気がしてきませんか?
偶然の出来事を捉える5つのスキル
さて、それでは肝心の幸運を引き寄せるための5つのスキルです。
- 好奇心:新しい学びの機会を模索する(Curiosity)
- 持続性:たとえ失敗しても努力し続ける(Persistence)
- 柔軟性:姿勢や状況を変えることを進んで取り入れる(Flexibility)
- 楽観性:新しい機会は実行でき達成できるものと考える(Optimism)
- 冒険心:結果がどうなる分からない場合でも行動することを恐れない(Risk-taking)
固定観念に縛られずに、常にオープンマインドで過ごす、という感じでしょうか。
そうすることで偶然の出来事によって良い方向に導かれていく、と考えます。これをハップンスタンス・アプローチとか、偶発性アプローチと言います。
また、幸運には出来事だけではなく、人との出会いも含みます。むしろ出会いこそがキャリアや人生に最も強く作用すると言います。
(プランド・ハップンスタンス理論:planned =計画した、happenstance =思いがけない出来事、偶発事態)
「夢」は漠然としたイメージ
従来のキャリア理論では、「夢」、つまり目標を明確に設定することからスタートしていました。
例えば、○○社に入社するとか、○○職に就くとかです。
しかし、「夢」を明確にしなくてもいいんだ、と言うところがこの理論のもう一つの面白さです。
それ故に、ハップンスタンス・アプローチはキャリアビジョンを描けない人や、将来に夢を持てず悩んでいる人への支援に向いていると言われます。
「夢」は抽象的な「ありたい姿」でもよく、イメージを持って、それをシンプルな言葉「タイトル」で表現すると良いそうです。
「タイトル」は、「人に頼られる存在」とか「革新的な技術者」とかになるのかもしれません。
また、「文武両道」や、「なんでも話しあえる家族」など、仕事以外にも広く応用できる考え方だと思います。
もちろん、具体的な目標を持つことも素晴らしいことです。
そのような人に対しても、達成に向けた努力を続けながら、同時に様々な可能性に対して自分を開くことで、より素晴らしい偶然と出会うことがきる、と説いています。
実践編
5つのスキルを行動に移さなければなりません。
しかし、行動を止めてしまう心理的な障がいがあります。
それぞれ紹介しますので、自分の心の中に潜む阻害要因と向き合ってみてください。
- 好奇心:阻害要因は「学びへの諦め」
- 持続性:阻害要因は「失敗への恐れ」
- 柔軟性:阻害要因は「状況の変化への恐れ」
- 楽観性:阻害要因は「未経験の事への不安」
- 冒険心:阻害要因は「保証のない事へのためらい」
阻害要因を一つでも取り除くように行動したり、日ごろの生活を少しだけ見直してみるといいかもしれません。
挫折を乗り越える対処法
失敗は誰もが経験することですが、そのために努力することへ臆病になり一歩を踏み出せない、と言う人も多いと思います。
その克服方法も説明されています。
以下の問いかけを考え、答えることによって、自らベストを尽くそうとする姿勢になれるそうです。
「失敗を恐れて実行できないでいることは何か?」
「失敗による最悪のシナリオは何か?」(恐れを自覚することで対処しやすくなる)
「失敗から学んだことは何か?」(失敗は有益で恐れる必要はない)
「反対に、最善のシナリオは何か?」(挑戦した場合の有益性)
「一度も挑戦しなかったらどうなるか?」(挑戦しないデメリット)
「以上を踏まえて、あなたはどうするか?」
まとめ
ここまで読んだ方は、幸運は偶然だけに左右されるものでも、単に待つものでもない、ということをご理解頂けたのではないでしょうか。
私になりにまとめると幸運を呼び込むのは以下のようなプロセスだと思います。
- 幸運に出会えるように行動し、学び続けること(好奇心、持続性)
- 偶然の出会いや出来事を、幸運だと気付く感性を磨くこと(イメージ、タイトル)
- 偶然に出会ったあと、それを幸運に結び付けられるようにチャレンジすること(柔軟性、楽観性、冒険心)
是非実践してみてください。
■参考文献
職業相談場面におけるキャリア理論及びカウンセリング理論の活用・普及に関する文献調査
独立行政法人労働政策研究・研修機構:https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2016/165.html
「キャリア・コンストラクション ワークブック」 金子書房
安達智子・下村英雄:不確かな時代を生き抜くためのキャリア心理学
「その幸運は偶然ではないんです! 」 ダイヤモンド社
D. クランボルツ・A. S. レヴィン(花田光世・大木紀子・宮地夕紀子訳)