何をするにもモチベーションは大切ですが、転職活動においても同様に重要です。モチベーションはメールのレスポンスの速さや、面接でのちょっとした受け答えや表情に現れ、その人の印象を左右します。
しかし、モチベーションはコントロールが難しく、思い通りにならないこともあると思います。
そこで、心理学を利用して、今より少しモチベーションをあげる方法を考えてみました。
「最後の1回」
「ゴールはすぐ目の前」
「今日働いたら明日から連休だ!」
このような状況で自然とやる気が出てくる経験をした記憶はありませんか?
この「ゴールが近づくほどやる気が出る」現象を「目標勾配仮説」と言います。
「目標勾配」という名称が「ゴール目前のやる気」というイメージにつながりにくいですが、目標というゴールに近づいたときに、モチベーションが急勾配で上昇することから、「目標勾配」と言われます。
心理学者でイェール大学教授だったハル(Clark Leonard Hull)によって提唱され、正式には「goal gradient hypothesis」と呼ばれるそうです。
ゴールがすぐそこにあるとき
上述の通り、ゴールすぐそこまで来ているときは、やる気が出ます。ぜひ、「ゴール目前」であることを明確に意識してみてください。
数を数える時も、ゴールから測る方がモチベーションアップにつながると思います。
例えば、発射打ち上げも1.2.3・・・ではなく、10.9.8・・3.2.1と数えます。その方が「ゴール目前」であることが明確になり、盛り上がります。
「も~い~くつ寝るとお正月」という歌も正月とうゴールからの日数を測っています。前回のお正月から350日くらい経過した~と歌ってもピンとこないので、見事に目標勾配仮説に則っています。
ゴールが遠く感じる場合
では、ゴールがまだ遠い場合はどうすればよいでしょうか?スタートしたばかりだとゴールが遠いのでモチベーションが上がりにくい、ということになってしまうのでしょうか?
そんな時のために参考になる例があります。
「下駄」をはかせてスタートするというやり方で、販売戦略でも実践されています。
A. コーヒーを10杯飲めば、1杯無料になるスタンプカード
B. コーヒーを12杯飲めば、1杯無料になるスタンプカード(ただし、初めからスタンプが2個押されている)
ゴールまで必要なスタンプの数は同じ10個ですが、初めから2個押されているBのカードをもらった人の方が、コーヒー10杯を達成する可能性が高いそうです。ゴールが遠くても、「ゴールに近づいている感覚」が、モチベーションを向上させるようです。
ゴールまで遠い場合は、ゴールを細分化してスモールステップを設定してください。その時に、可能であれば最初の1ステップをすでにクリアしていると考えてください。それが出来ればささやかなモチベーションアップになり、取り組みやすくなります。
それからは、小さなステップ=ゴールを一つクリアすることに集中してください。
最終ゴールは見ないようにしましょう。
こうすることで「ゴールに近づいている感覚」が得られて、やる気がアップするはずです。
転職のシーンで利用してみる
では転職シーンで応用することはできるでしょうか?
例えば、社長面接の時だと、「ゴール目前」です。「今日が最後の選考だからがんばるぞ」と自然とモチベーションが上がるでしょう。
一方で、これから転職活動を始めようと思った時は、「やることが多くて大変そう」と思うかもしれません。求人を調べて、転職サイトに登録して、エントリーシートを作成して・・・。それが出来たら企業に応募して・・・。確かに多いですね。
まず一つ、スモールステップをクリアしてください。なんでも構いませんが、目に見える、形に残るものがよいでしょう。そうすれば「ゴールに近づいている感覚」がより強く得られるはずです。
エージェントのご利用もおすすめです。企業情報を多数持っていますし、その中から希望に合致する求人のピックアップしてくれて、企業へのエントリーも代わりに行ってくれます。いわば、2~3個のスタンプをすでに持っている状態からスタートできます。
その場合でも、選考途中は先が長く不安を感じてしまうかもしれません。そんなときは、スタート地点から今に至る道を振り返ってみてはいかがでしょうか。例えばこれから1次面接だというときに・・・
「書類選考に通過した」「基本的な質問を想定して回答イメージも作っている」「そういえば悩みながら一生懸命、履歴書と職務経歴書を作った」などいろいろと思い出されるはずです。
それに気付けるとゴールまでの距離感は変わるのではないでしょうか。「選考全体の半分くらいはすでに達成しているはずだ。」と自信が出てくるかもしれません。
人のモチベーションを上げる
この効果を利用して、相手のモチベーションを上げることができるでしょうか。
最終選考に呼んでもらうことになったとき、採用担当者にこう聞いてみてください。
「社長面接ということは、いよいよ最後の選考ですか?」
採用担当者と「ゴール目前」のイメージを共有できて、より協力的になってくれるかもしれません。
選考の初期段階だと、「書類選考を含めて全部で選考は何回あるでしょうか」と質問してみてはいかがでしょう。すでに書類選考を通過しているとすると、「ゴールに近づいている感覚」を共有でき、面接官のモチベーションを上げることができるかもしれません。
もし、あなたが面接官だった場合は、より利用価値が高まります。ゴールが近いことを強調して伝えると、候補者のモチベ―ションが急勾配にアップしてくれるかもしれません。
「書類選考、1次面接のご参加ありがとうございました。すでに選考は8割がた終了しました。残すは社長面接のみです。」
こういわれると、「よし、もう少しだ。頑張ろう!」とより前向きになってくれそうです。
最終選考段階での辞退は採用担当者にとっても避けたいはずなので、ぜひ使ってみてください。
日々の仕事で活かしてみる
日常が少し楽になるかもしれないささやかな応用方法を。
例えば月曜の朝、仕事始めだったとします。「今週も一週間が始まった。5日間は長いな」と思っているかもしれません。ゴールまでの距離を変えてみてください。
例えば、「お昼休みまであと3時間だ」と考えてみてはどうでしょうか。
ゴールまでの距離を変えるだけでモチベーションを上げることができるかもしれません。
「目標勾配仮説」をうまく使って、活力のある日々に活かしてみてください。