今や求人広告は乱立し、大手求人媒体であるリクナビやマイナビ、エン転職、dodaだけでなく、今や日本全国にある求人広告媒体は1000を超えるほどあり、日本独自の発展を遂げています。
その中でも、求人検索型の“Indeed”のがほぼすべての求人を集約するようになり圧倒的な認知度を誇っています。
また、タイミーなどすき間バイトの求人サイト、フリーランスや副業向けのクラウドワークスなどもあり、雇用形態・働き方・ターゲット層・業界・業種などで分けられた求人媒体は多様化しています。
ユーザー(使用者サイド)としては、多様な媒体があることで、自分にあった働き方が模索できる一方、タイミーに闇バイトなどの求人の掲載があった疑惑などもあり、簡単に応募できる求人のリスクも浮き彫りになってきています。
また、クライアントユーザー(掲載企業サイド)はIndeedなど自社で求人掲載などを行い管理ができるようになった一方、自社での管理コストが増えたり、効果的な求人原稿の制作の難しさ、クリック課金型の運用の難しさもお感じになることがあるのではないでしょうか。
私は、人材業界歴が約20年となってきましたが、近年の傾向について過去からの流れとともに、ユーザークライアント(使用者サイド)の今後の転職活動や求人広告との向き合い方、クライアント(掲載企業サイド)の採用活動の在り方について考察してみました。
(文献など情報が残っていないこともありますので、一部筆者の記憶にたどる面もありますが、その点はご了承くださいませ)
リクナビの一強時代
インターネット黎明期は、1985年~1994年。新卒向けの就職情報サービス「リクナビ」が日本で初めてのインターネットの求人広告媒体として、1996年に誕生しました。
それまでは、就職ブックではがきから企業に応募するスタイルが一般的で、インターネットから応募できるリクナビの誕生は画期的でした。単価も非常に高く、掲載するだけでも数百万円、コストをかける企業では1000万円以上も一般的で、企業によっては億単位の価格をリクナビ掲載に費用投下していました。
リクナビに掲載するのにはコストはかかりますが、就職氷河期の売り手市場であること、また簡単に応募できる仕組みになっているため、この時代であれば、リクナビに掲載すれば多数の応募を簡単に集めることができ、学生をいかにふるい落とすのかということが焦点となるような採用が行われていました。
求人媒体の戦国時代到来
就職媒体を作り、その媒体にクライアントの企業を掲載するという、リクルートが構築したビジネスモデルに、マイナビやエン・ジャパンなども媒体運営に乗り出し、様々な求人媒体が誕生しました。2000年以降はまさに求人媒体の戦国時代の到来です。
中途採用の分野では、リクナビNEXT、マイナビ転職、エン・ジャパン、dodaなどが生き残り、新卒においてはリクナビ、マイナビの二強になっていきました。
この当時は、まだまだ企業優位な買い手市場のため、求人広告に掲載すれば採用成功しやすい市場です。媒体会社は営業提案力の高い営業社員を配置し、企業へ手厚いサポートを行い、採用成功へ導くために、手取り足取りのサービスを提供していました。
ビズリーチによって「転職がより当たり前」の社会に。
2009年にビズリーチが登場しました。ビズリーチは、企業が求職者を直接スカウトできる「ダイレクトリクルーティング」の概念を浸透させたといわれています。創業者の南氏が転職活動で求職者における情報の壁を感じ、透明な転職市場を目指したことが創業のエピソードとしては有名です。
「ダイレクトリクルーティング」とは、企業が求職者の情報を見て、直接メールを送信できるため、企業は欲しいと思う人材に直接リーチできることが特徴で、企業がより主体的に採用を行うスタイルになります。
当時、ビズリーチの社員からは「ビズリーチは人材会社ではなく、インターネットの会社だ」といった趣旨のことを言っていたことを聞きました。
私見となりますが、まさに、ビズリーチの一番の強みは、徹底したマーケティングや効果的な広告戦略こそにあったのではないかと思います。
終身雇用制度が主力の日本の労働環境においては、転職回数が多いことはまだまだマイナスイメージだったため、人材業界では人材の転職をストレートに煽るような文言、企業が引き抜きをイメージするような表現は避けられてきました。例えば、エン・ジャパンは「転職は慎重に」というメッセージを発信するなど、転職を煽ったり、無理やり企業から人材を引き抜くスタンスではないという立場をとっていました。既存の人材会社は多かれ少なかれ、転職を忌避するクライアントを意識した広告戦略を行っていました。
しかし、ビズリーチはより分かりやすくはっきりと、「転職を促す」「他社から人材を引き抜く」そのメッセージをCM、Web広告で圧倒的な物量で伝えてきました。
その結果、人材会社としては後発のビズリーチでしたが、圧倒的な登録数や認知度を誇るようになり、国が目指す「雇用の流動化」を推進したといえるのではないでしょうか。
Indeedの出現
Indeedは、2004年にアメリカで誕生。日本でのサービス開始は、2009年。求人サービスを展開する企業の間では「黒船が来た」と大きな話題になりました。そして2012年には、株式会社リクルートにより買収され、リクルートグループの一企業になり、現在では、Indeedがリクルートグループの統括的位置づけになっています。
サービスの特長は、「求人版のGoogle」とも呼ばれる、求人検索エンジンです。Indeed(インディード)は、インターネット上のありとあらゆる求人情報を自動で集める、クローリングで、求人をIndeedで検索できるようにしているのが、最大の特徴です。
また、「クリック報酬型 求人広告」であることも大きな特徴です。良い求人であれば自動で上位表示をされるため、無料で応募を獲得できる仕組みとなり「無料で使用できる求人広告」としてクライアントユーザーに広く認知、使用されるようになりました。一方で、応募効果が薄い求人ですと課金しなければクリックされないため、効果が出にくい求人の場合は課金が必要なため、応募獲得コストがかかる仕組みとなっています。
そして、現在IndeedはIndeedPLUSへの移行を行い、2025年4月には完全にIndeedPLUSとなります。
IndeedPLUSは、今までの特長であった自動で求人を掲載するクローリングがなくなり、IndeedPLUSへの直接掲載が必須になります。クローリングによって全国の求人が掲載されていたメリットが薄れそうですが、リクルートグループが持つリクナビNEXT、タウンワーク、はたらいく、とらばーゆ、fromAnavi、リクナビ派遣がIndeedPLUSに集約されるようになるため、日本の求人ユーザーの7割を囲い込める見込みになっているようです。IndeedPLUSに掲載された求人は、リクルートグループの適した求人媒体へAIが判断し自動で掲載されるようになり、相乗効果が発揮できるとのことです。
ユーザーサイドは、AIシステムによって、IndeedPLUSを見たときに、自分が検索した求人や登録したデータをもとに、自分に合致した求人が閲覧できるような仕組みになり、より簡単に希望する求人を探し、応募ができるようになるでしょう。
リクルートグループはより省人化を進め、AIやシステムでの効率的な求人広告の在り方に舵を切ったのです。
今後の転職活動の行方
<人材を募集する企業>
営業社員が企業へ積極的な提案を行い、企業への求人広告の内容や採用ノウハウも含め提案するスタイルが徐々に少なくなりつつあり、企業自らが媒体を選定し、自社で制作する求人広告を掲載し、AIによる自動マッチングが主流になりつつあります。
しかし、Indeedに掲載しても思ったような人材が出ない、いくら課金しても応募が来ないという声も良く聞きます。
・求職者が求める条件なのかどうか
・求人原稿は求職者にとって魅力的に表現できているのか
・求める人材像は市場にどの程度いるのか
を理解したうえで、求人原稿を作成しなければ、いくら課金をしても応募にはつながらないということが起こりえます。
今までのように、求人広告に一定のコストを支払うと人材が確保できるという時代は終わったと考え、人材を確保することは、経営課題の中でも最も重要なことであるとして、自社での人材募集の戦略を考える必要が生まれています。
<転職を考える求職者>
人手不足が深刻化し、より転職サービスが充実する中で、システム的なマッチングが実現するため、より簡単に企業への応募や転職ができるようになるでしょう。
そのためキャリアチェンジやキャリアアップがしやすくなったことで、より積極的に自分のキャリアに向き合い、理想とするキャリアを目指しやすくなりました。
一方で、過剰なサービスに煽られて、十分なキャリアを積まずに転職を続けてしまうと、スキルが身に着かず、転職をするごとに給与条件が下がってしまうこともあります。
また、簡単に、広告単価を安く応募できる仕組みが整う中、違法性の高い求人、誇大広告を行う求人、労働基準法を守らない求人も増えてきています。応募に際しては、個人情報を求められるため、本当に問題がないサイトなのか情報に間違いがないのかを自分で判断できるリテラシーが求められるようになります。
自分自身でキャリアをデザインする力、そして情報を取捨選択する力がより求められるようになります。
私たちのスタンス
私たちは、ムツビエージェントは、人材を募集するためにはWebの広告戦略は大切にしていますが、“人(ヒト)”でしかできないことを大切にしています。
企業には、直接訪問を行い、企業の実態を理解し、安心安全な求人を求職者に提供するのはもちろん、企業には市場で求められる条件や市場感を伝えて、採用の実現が可能な求人となるよう、また企業の魅力を引き出した求人原稿をご提案させていただきます。
ご登録いただく人材とは、必ず面談を実施し、今までのキャリアやスキル、転職したい理由、今後目指したいキャリアなどを明確にしながら、よりマッチする求人をお勧めします。不要な転職はキャリアダウンになるため、無理に転職を勧めることはありません。
それは、“徳島”にこだわった採用支援・転職支援を行うことが私たちの使命だからです。
システム的な単純なマッチング×課金では、徳島の企業の魅力を人材に伝えることは難しくなっていってしまいます。
人口が減少してゆく中、徳島の企業が人材に選ばれるためにはどのような環境や条件が良いのか、またもともと持つ企業の魅力やポテンシャルを企業の人事担当者・経営者と話し合う中で、良い求人づくりを目指しています。
そして、徳島で生活したい、働きたいと思う人材に、少しでも希望する求人をご提供し、転職してよかったと思える、転職サポートを目指し続けます。